日本財団 図書館


1990年代、世界中で舶用ディーゼルエンジンからの排ガスについて調査が進められた。特に、ロイドではVlissingen号の実測(Banisoleinman, 1993)及び英仏海峡での調査(Carlton, 1994)で、舶用エンジンからの排ガスが環境や人間の健康に与える影響は必ずしも大きくはないとする理論を検証している。

 

米国でディーゼルエンジンからの排ガスを実測した例としては、沿岸警備隊(United States Coast Guard: USCG)が自己の所有するカッターが連邦、州、国際の排ガス規則に適合しているかどうかを調べるため、EPAが1994年スパーク点火及び圧縮点火舶用エンジンの規則提案(Notice of Proposed Rule Making: NPRM)を出した時点に合わせて行ったプロジェクトがある。

本調査に参加したカッターは、全長378フィートのWHEC、全長270フィートのWMEC、全長110フィートのWPB (2隻)及び全長41フィートのUTBの合計5隻であった。各カッターは、2基のディーゼルエンジン推進であるが、本調査では主推進エンジンからの排ガスのみが測定されている。

測定対象の排ガスは、NOx、CO、SOx、HC及びPMに加えて、O2及びCO2も計測された。計測は一般にEPAのガス汚染物質計測法によったが、PMについてはサンプルを希釈して等価値を求める新しい方法を用い、具体的方法はISO-8178の舶用エンジンのテスト方法を参考にして行われた。

 

USCGのカッターが、この時点で順守すべき規則の状況は下記のとおりであった。

CAA 213(a)に基づき、EPAは1994年37kWあるいはそれ以上の非道路用内燃機関の排ガス規制の最終規則を公布した(89FR31306, June 17, 1994)。その後、EPAは舶用内燃機関(ディーゼル及びガソリン)に対するNPRM“Emission Standards for New Gasoline Spark-Ignition and Diesel Compression Marine Engine”を出している(FR55930 Nov. 9, 1994)。

本規則の中で提案されていた舶用ディーゼルエンジンからの排ガス規制値は、NOx 9.2g/kW・hr、HC 1.3g/kW・hr、CO 11.4g/kW・hr、PM 0.54g/kW・hrであり、非道路用ディーゼルエンジンと同じ規制値であった。ただし、舶用エンジンの場合は、出力の上限に関係無く適用されることとなっている。

 

州レベルでは、カリフォルニア州の大気資源局(California Air Resource Board: CARB)がカリフォルニア大気清浄法及びSIPに基づき舶用エンジンからの統一的排ガス規則を出そうとしていたが、汚染の特にひどい地域、例えば南カリフォルニア沿岸地域では既に独自の規制を始めていた。

ワシントン州のピュージェットサウンド地域でも、同じような排ガス規制が行われていた。

USCGカッターは、MARPOL 73/78附属書VIにも従う必要がある。附属書VIの規則については次節で詳しく述べるが、ディーゼルエンジンのNOx規制値はエンジンの回転数(低速、中速、高速)に従い、次のようになっている(ここにn: 回転数、exp: exponential)。

n<130rpm 17g/kW・hr、

130≦n<2,000rpm 45 n・exp (-0.2) g/kW・hr、

n≧2,000rpm 9.8g/kW・hr

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION