フェリーボートの場合は、運航区間も限られているので固体及び液体廃棄物の排出はほとんど問題とならないが、エンジンからの排ガスによる大気汚染が環境団体の注意を引いている。
橋やトンネルの増設に比べて、フェリーボートの増便や新しいルートの設定は容易でフレキシビリテイーに富んでいるので、現在米国ではフェリーボートの増設ブームが続いている。特に、サンフランシスコやニューヨーク近郊では需要が多い。
フェリーボートは乗客・貨物の大量輸送機関としての利点を有しているが、SOx、NOx、PMといった排ガスを大量に排出する欠点を有している。フェリーボートの場合は、比較的限定された地域でこれらの排ガスを定期的に排出するので、問題は簡単ではない。
1997年、サンフランシスコの環境団体Bluewater Networkはフェリーボートからの排ガスが環境に重大な影響を及ぼしているとの報告書を出し各界に注意を促したが、現在フェリーボートの新ルート設定許可の第1条件は排ガスが環境に悪影響を与えないこと、すなわちエンジンがNOx等の排ガスを減少する新技術を採用していることとなっている。米国の舶用エンジン排出規制は益々厳しい方向に向かっているが、フェリーボートの場合はそれらを充足するだけに留まらず、天然ガスを使用したクリーンエンジンをフェリーボートに利用するプロジェクトがエネルギー省とガス研究所の協力で進められており、その成果が期待されている。
第3章で述べたように、環境に優しい船舶及び舶用機械の問題は各界ともやっと総合的指針を樹立して一部のハードウェアを完成した段階であり、一方、法規の方は益々厳しくなることが既定方針となっているので、それを見越したハードウェアの開発と売込みが激しくなっている。
本テーマについては、今後とも少なからぬフォローアップが必要と思われる。
(以上)