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現在のVOC回収技術は熱酸化、触媒酸化、凝縮、炭素吸着、吸着等の技術を用いているが、いずれも多額の初期投資が必要であり、操作は複雑でVOC回収のリターンは少ない。したがって、小工場やマリーナでは、法規上どうしても必要な場所にしか回収装置を設置していないのが実状である。特に、濃度の低いVOCの回収装置の開発が急務である。濃度の低いVOCは今までも地域的に環境上問題とされてきたが、これ等の長期間の堆積が地球規模で問題にされ始め、法規的にも規制され始めている。従来、濃度の低いVOCの回収には吸着法が使用されてきたが、上述のごとく高価であり、年間10トン以下のVOCしか排出しない小工場やマリーナにはそのコストは過大である。

低濃度VOCの回収装置を求めている業者は、マリーン燃料オペレーション、マリーンエンジンオーバーホール及びクリーニング業者、電気メッキ業者、化学及び薬品製造小工場、自動車部品製造工場、木材保存プロセス業者、石油関連業者、軍事オペレーション等と巾が広い。

 

上記企業のためのシステムとして提案されたシステムを、第6-4図に示す。このシステムは、低濃度VOCを吸着するカーボン濃縮器(VOC Concentrator)を備えている。プラントで発生したVOCは、まずカーボン濃縮器に入り濃縮される。濃縮されたVOCをパージするために、窒素あるいは二酸化炭素といったイナートガスが利用される。イナートガスは濃縮機に入る前にヒーターで加熱され、濃縮器に入って濃縮されたVOCをパージして凝縮システムでVOCを回収する。イナートガスは再びカーボン濃縮器に送られ、サイクルを繰り返す。

本システムの利点は、イナートガスを利用してVOCを着脱させ、VOCの汚染防止、リサイクルを容易とし、システムのコスト高、複雑化を防いでいる点である。通常運転では、カーボン濃縮器は主システムから切り離され送られてくる低濃度のVOCを連続的に吸着し、ある濃度に達した時点で主システムにつないでVOCを回収する。通常1個の濃縮器で昼間生産時間内の低濃度VOCを吸着し、夜間工場が動いていない時に主システムでVOCを回収する。3シフトの場合、あるいは多くのプロセスの流れを持っている工場では、多くの濃縮器と一つの回収装置をうまく組み合わせて使用し、全体のコストを最小としている。

 

 

 

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