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当然、本技術の場合はSCRの設計が性能を左右するが、最近のエンジンはNOxのレベルが低いので、サイレンサーとSCRを一体化しコンパクトで効率の高い設計を可能にしている(第6-3図)。

 

レクリエーション用ボートからのEPA排ガス規制は、船外機、水上オートバイ用2ストロークSIガソリンエンジンから排出されるHCを1998モデル年から暫時排出量を減らし、2006モデル年までに基準年の75%減の排出量とし、全てのソースから排出されるHCの3%を占めるといわれるレクリエーション用ボートからのHCを減らそうとするものである。ガソリンエンジンメーカーが上記排出基準に合格するために採用している技術は、基本的に燃料直接注入、4ストロークエンジン、触媒コンバーターの3つである。燃料直接注入によるHCの減少量は大きい。この方法は従来の2ストロークエンジンと異なり、排気ポートが閉まってからピストン直上のシリンダー部に燃料を適正量注入するので、不燃焼ガスが排気ポートから排出されることはない。結果として、HCの排出量は従来よりも80%減り、燃料効率は35〜45%増加する。

 

4ストロークエンジンはクランクケースから空気/燃料/オイル混合気体を排気する必要がないので、2ストロークに比して格段にクリーンなエンジンである。最近4ストロークエンジンの設計が進歩して、より広い出力範囲での製品が可能となっている。

触媒技術は舶用ガソリンエンジンにも適用可能であるが、USCGのエンジン表面温度及び発生音基準を満たす必要上水冷却を採用しているため、舶用エンジン特有の技術問題、例えば海水が直接触媒に接触して腐食問題を起こさない等の技術問題を克服する必要がある。

 

米国の船外機市場の大手OMC(Outboard Marine Corporation)は、FICHT燃料直接注入システムを開発し、エレクトロニクス作動の高圧パルスシステムで350psi以上の圧力で各エンジンシリンダーに毎分7,000回を超す割合で直接燃料を噴霧状に注入する90-225hpのエンジンを発売している(なお、2000年12月に同社はボート、エンジン部門を分離すべく、チャプター11(会社更生法)を申請した。)。オーストラリアのOrbital社が米国で広く販売しているのは空気式燃料直接注入システムの船外機で、例えばMercury Marine社では135-225hpのエンジンにOrbital社の技術を適用している。Yamahaも独自の空気式燃料直接注入システムを開発し、2000モデル年から米国のマーケットで販売している。4ストロークエンジンは従来100hpが設計上の壁といわれてきたが、設計法の進歩により現在では大部分の船外機に適用可能となっており、マーケットで多くの製品が売られている。これらの製品は、大部分2006モデル年の基準を満たしている。船外機エンジンで触媒技術を組み込んだものは未だ発売されていないが、Yamahaが1999モデル年から触媒技術を組み込んだ水上オートバイ用エンジンをマーケットに出している。

なお、米国における舶用エンジンからの排ガス規制の概要等に関しては、2001年春に別途報告書をとりまとめているので、ご参照願いたい。

 

 

 

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