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バクテリアはエマルジョン化した油をよく食べるので、OWS/OCMシステムの欠点を補正するのには最適である。バクテリアが油を食べる量は、温度とバクテリアの置かれた環境に左右されるが、200ppmの油水360ガロンを5ppmとするのに8-12時間必要である。バクテリアは、クリーナー、消毒剤、多量の重金属が入ってくると死滅する。いずれにせよ、常時バクテリアが作動する状態を作ってやることが必要であるが、350ガロンのバイオリアクターで1日1,000ガロンの油水の処理が可能である。

 

ポリシャーとして吸着材を使用する方法は非常に有効であるが、吸着材が汚れていたりするとあまり働かなかったり、最大理論吸収値まで吸収しない場合がある。吸着材として使われる材料には、粒状活性カーボン(Granular Activated Carbon)、オルガノクレー(Organo Clay)、重合ポリマー等がある。活性カーボンとオルガノクレーは油及びその他の有機物を吸着し、陸上用として使用実績が多いが、舶用としては吸着材の量が多くなるのであまり有効ではない。加えて、油量が多いと有効に働かないという欠点を持っている。重合ポリマーポリシャーは、油と反応して新しい物質、すなわち新しい固形廃棄物を作るので、それを取り除くフィルターが必要である。また、ポリマーが膨れてパイピングを詰まらせたり、消耗品であるポリマーが非常に高価であり、油量が多いと働きが鈍る等の欠点を持っている。

 

米海軍が最も注力してきたのは第3の超分離膜を用いる方法で、既に油分を常に5ppmに保つことのできるセラミック膜超濾過ポリシャーを完成している。このセラミック膜は、水の分子は通すが水の分子より大きなエマルジョン分子は通さないので、エマルジョン化した油を完全に除去することができ、油分を現状より1/100に減らすことが可能である。セラミック膜の初期コストは非常に高いが、再使用可能である利点も持っている。本セラミックの、汚れに対するメンテナンスは厄介である。そのため、海軍は幾つかの防汚塗料を開発中で、開発された塗料は順次セラミック膜に塗装試験し、膜のメンテナンスと寿命延長に貢献する予定である。油水分離に関する膜技術の開発はグレー水やブラック水の膜分離技術よりも進んでおり、いつでもILDS(第5-4節)に組み込める状況になっている。

 

油水分離装置は、商船用としても非常に性能の良いものが出回っている。カナダのConor Pacific Environmental Technology社ではHydromemという商品名でビルジ油水とともに有害な菌を含むバラスト水を同時に処理することのできるシステムを発売し、既に18基を製造しているが、そのうち11基はカナダ海軍の艦艇に搭載されている。Hydromemは、第5-4図に示すごとく、まず、ビルジ油水中の固形分及び油分を除き、ハイドロサイクロン分離機でエマルジョン化した上で、排出するシステムとなっており、IMOの“油フィルター及びビルジアラーム、15ppmOCM”として承認されている。

 

第3-3節で述べたビルジ油水の排出で手痛い罰金を支払わされたRCCLは、第5-5図に示すMarinfloc(TMS社)と称する油水分離装置とスラッジ脱水ユニット(SDwU)で問題を解決しようとしている。Marinflocシステムは、基本的にHydromemと同じであるが、油水の余熱装置とSDwUが付いていることが違っている。

 

 

 

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