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ブラック水の処理において艦艇とクルーズ船の最大の相違点は、クルーズ船では装置の重量や容積に対する制約が少ないので生物学的処理装置も使用可能な点と、艦艇に比しはるかに多くのMVSSが使用されていることである。MVSSは、1956年はじめて船舶用トイレットシステムとしてスウェーデンで開発されたもので、1960年代のはじめから普及し始め、1970年代中頃にはUSCGのカッターに採用され、今日では船舶のみならず列車や航空機のトイレットシステムとして馴染みの深いものとなっている。

 

MVSSは通常の重力型トイレットに比して、真空発生装置等の特殊装置を必要とするが主要な利点は下記の2点である。

*パイプシステム-重力型システムに比してパイプ径が小さくてすむ。ブラック水のみの場合は1.5〜2インチ径、グレー水及びブラック水同時処理で水量が多い場合は3インチ径を使用。垂直上昇も可能等融通の効くパイピングが可能。

*ホールディングタンク-重力型システムに比してタンク容積が少なくてすむ。ブラック水のみの場合は容積90%減、グレー水とブラック水同時処理の場合は50%減となる。

 

MVSSは基本的にホールディングタンク中の真空発生装置で40〜60%の真空を発生して汚物を吸引するシステムで、基本構成要素は1)真空発生装置及びホールディングタンク装置、2)真空インターフェース装置、3)パイピングシステムの3つである。

ブラック水のみを処理するシステムでは、トイレット中の汚物はボタンを押すと排出バルブが開きパイピングシステム中の真空に引かれてホールディングタンクへと向かう。同時に水が流れて、システムをリンスする。小便器からの汚水は重力で落下して、インターフェースバルブを介して真空パイピングシステムへと導かれる。グレー水をMVSSに結合する場合も、インターフェースバルブを介してグレー水を真空パイピングシステムに導く。

 

イリノイ州RochfordにあるEnvirovac社は、MVSSをEVACの商品名でこの20年来製造販売し、世界中の商船、米海軍艦艇、USCGやカナダコーストガードのカッター、漁船、レクリエーション用ボート等あらゆる種類の船舶5,000隻に搭載している。

EVACには第5-1図に示すごとく、エジェクターシステムとポンプシステムの2種類がある。エジェクターシステムは汚水を再循環させてエジェクターの真空を作り出すもので、ホールディングタンクは大気圧に保たれるが、ポンプシステムでは汚水を集める真空ホールディングタンク内でポンプを作動させる。クルーズ船のように船客が多く、真空トイレットから発生する音が問題となる場合は、空気をトイレの外からとるEVAC 90/Silent型、サイレンサーの付いたEVAC 90/Super Silent型もある。これ等によって、ノイズレベルは75-80db(A)まで下げられる。

 

 

 

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