日本財団 図書館


米海軍では、ESS−21の将来像として第4-4図のごときシステムコンセプトの固形廃棄物及び液体廃棄物を統合的に処理する統合廃棄物処理システム(Integrated Waste Processing System:IWPS)を考えている。実際のIWPSにどのコンセプトが採用されるかは未定であるが、第4-4図の末尾にはリスクとコストの点から8種のシステムコンセプトの総合得点が比較されている。IWPSには、海軍が開発中のプラズマアーク廃棄物破壊システム(PAWDS)が用いられる予定である。PAWDSは、IWPSの中で固形廃棄物とともに液体廃棄物からの濃縮残査も焼却する。PAWDSは、現在既に艦載用に設計されたものが陸上でデモンストレーション試験されており、米海軍の固形廃棄物関連技術開発の目玉ともいえるものなので第4-3節で詳述する。

 

米海軍の固形廃棄物に関連して、バイオ劣化型プラスチックの積極的利用が進められている状況を概観してみる。前述のごとく、PWPで処理されたプラスチック円盤やシュレッダーで処理後の金属やガラス小片を最終的にバイオ劣化型プラスチックの袋に入れて艦上保管したり海洋廃棄したりされていることは、これらの袋が既に市販されていることを示唆している。

例えば、Technicoat社(Winnipeg、Manitoba)が売り出しているバイオ劣化型プラスチック製のゴミ袋は、通常のプラスチック袋だと分解に400年かかるところを微生物の助けを借りて6か月から3年の間に完全に分解するとのうたい文句で売り出されており、価格も通常のものと同じといっている。

 

バイオ劣化型プラスチックは1980年後半から注目を集め、1990年代後半には国際的規格作りを目指す会合等も開かれたが、いずれも米国が中心的役割を果たしている。通常のプラスチックに比して焼却熱が1/2-1/3という利点もあるが、耐水性、強度、剛性、耐衝撃性、成形性などの物性面に劣り、特定の条件下では分解するための使用条件、環境に留意が必要で価格も高いというのが通念であった。したがって、今までは使用後回収費が高くついたり回収困難な、土木資材、堆肥の袋等に用いられるのみであった。しかし、米国ではバイオ劣化型プラスチックの積極利用に関するEOが出され、これに応え海軍も塗装用ショットブラスト、各種海中センサー類、一時的海上標識等バイオ劣化型プラスチックを使った製品を作り種々試験している。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION