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3.1.4.1.2.2 バイヤーズクレジット

欧米高速エンジンメーカーは、あたかもプレジャーボート金融の延長線上にあるが如く、船主へのファイナンスを提供している。アジアの高速船船主は中小企業が多いことから、このようなファイナンスは、新造船(当該エンジンの搭載)発注に大きな誘因となっている。従って、条件のいいバイヤーズクレジットを提供できるか如何が、本プロジェクトが成果を上げるための重要な要因になっている。

欧米メーカーが提供している融資条件も、さほど有利なものではない。しかし、日本のエンジンメーカーはアジア市場における中小船主に対するリスク管理、為替ヘッジ等のノウハウが不足しており、現状では、欧米メーカーと同様な融資を直接行うことには無理があると考えられる。当面は、日系のノンバンク、あるいは、関係金融機関との協調によるしかないと考えられる。ただ、日系金融機関では、全てのリスク管理を行うことは難しいため、メーカーの一部保証、リスク分担等が必要となってくるものと思われる。しかしながら、前述の企画型営業と同様に、日本のエンジンメーカーはこのようなバイヤーズクレジットに対して非常に保守的であるため、欧米メーカーとの非価格競争力の差が埋まらない状態が続いている。

A社は現在、ケースバイケースで商社を通じてバイヤーズクレジットの提供が可能となったが、条件面等を欧米各社に合わせておくことが必要である。また、各バイヤーズクレジットの申し込みは、ケースバイケースの評価が必要な旨了解されるとしても、融資内容について誤解を招かないよう簡潔な概要説明文書(パンフレット)にて提示される必要がある。さらに、後発メーカーである立場を考慮すれば、近年の東南アジアにおける急速な通貨下落を鑑み、バイヤーズクレジットを現地通貨建てで提供することを検討する必要があると思われる(但しリスクは増大する)。

なお、市場のシェア等を考慮し、エンジンを割り引いて提供することは、他社のエンジンから乗り変えようとする顧客にとり魅力的となるであろう。

 

 

 

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