第5章 推進システムパッケージのシングルソース化
欧州では、主機、減速機、プロペラ軸、プロペラ及び関連周辺機器を推進システムパッケージとして、一つの企業が設計・提供・現場での統合・アフターサービス全てに責任を持って提供する方式、いわゆる“推進システムパッケージのシングルソース化”が拡大してきている。これに関し、“The Global Marine Engine Business”において取り上げられているので、その概要を以下に記述する。
1. 背景及びメリット
専門下請け業者への依存の増大や業務の組立へのシフトなどの造船業の構造変化を背景として、造船所や船主は船舶建造プロジェクトの実質的な部分をアウトソーシングすることを期待している。最近の船舶の複雑化の傾向は、シングルソース化や完成引き渡しに拍車をかけている。
トータル・システム・アプローチは、効率や品質を向上させ、船舶建造プロジェクトの期限内完成を確実にするメリットがある。
2. 具体的事例
(1) WartsilaとLipsの協力
2000年6月、Wartsila(以下、「W社」という。)とTIグループのJohn Crane-Lips(以下、「L社」という。)は、舶用統合推進システムの提供に関して正式に協力協定を締結した。これは、造船業界においてパッケージ・ソリューション市場が拡大していることを示すものであった。
協定において、W社は、造船所に対して推進システム全体に関する主契約者となる。W社はディーゼルエンジンを提供する一方、L社はプロペラ、軸系、ベアリング、スラスター、ウォータージェット、ポッド(電動機格納式推進装置)、制御機器等を提供する。
この協力協定により、製品やシステムの販売のみならず、船の生涯を通した支援業務(エンジニアリング会社にとって重要な業務となりつつある)に関して、2社の市場が拡大した。
(2) MAN B&W Diesel A/S, Alpha Diesel
Alpha Diesel(以下、「A社」という。)は最近よく言われるようになった“ワン・ストップ・ショッピング”を1902年以来実施してきている。システム型アプローチの信頼性、効率性及び安全性のメリットを強調し、機能的に統合された完全な推進システム(動力を含む)を製造・改良してきた。近年、競合企業が各工場の製造量を抑制しているにもかかわらず、MAN B&Wは、A社の製品領域に投資するとともに、パッケージシステムの改良と開発に利益の再投資を行っている。