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第6章:政府と国際機関の影響

 

6.1 条約の改正

1997年7月に国際海事機関(IMO)の海上における人命の安全に関する条約(SOLAS90)に加えられたいくつかの重要な改正条項が発効した。1998年7月にはIMOの国際安全管理(ISM)コードが客船、RoRo旅客フェリー、タンカーについて発効した。ISMコード及び発効したSTCW条約め改正条項は、船舶運航の人的要素に的を絞ったものである。

SOLASの改正は1995年のIMO専門家委員会の報告書をうけて公布されたもので、復原性と生存性に関し新たな基準を定めたものである。その目的はフェリーの基準を強化することにあるが、規範的なアプローチをとるものではなく、特定の技術的解決策を推奨するものとはなっていない。1995年11月のSOLAS会議では、基準策定についてIMOにおいて強硬にグローバルなアプローチを維持する必要性が主張されるものと見られていたが、一部の地域の海象・気象条件から、それらの地域について、全世界で一般的に適用される措置よりも厳しい措置の適用が正当化されうるという決議を採択して、バランスの取れた外交的決着が図られた。

その後締結されたストックホルム協定では、バルチック海沿岸と北西ヨーロッパの18カ国が、当事国の港間を運航する既存のRoRo旅客フェリーについて、車両甲板上50cm以下の浸水状態においてSOLAS90の損傷時の復原性に関する要件を全面的に適用することとした。SOLAS90は本質的に基本的な基準であるが、旅客フェリーについては車両甲板上50cmの浸水状態にあっても傾斜しないことを求めた追加要件を定めている。

EC(欧州委員会-行政を司る機関)は現在、RoRoおよび高速旅客フェリーの安全性向上のために、EU(欧州連合)域外に便宜置籍された船舶でもEU共通安全規則に適合することを求めた法案を提案している。航海データの「ブラック・ボックス」の装備を義務づけるものであり、また、EU発着の航海中に生じた海難事故について、発生場所がどこであろうとも、加盟国はその調査を行う権利を有するという内容となっている。

 

6.2 国による保護

国有海運会社は助成を受けていると非難されるのが常である。地中海ではいまだにこうした国有海運会社が残っているが、それでも民営の海運会社は十分競合できる例が多いようである。それは補助金が運賃の引き下げよりも非能率な運航の温存を招くからである。Tirreniaは手厚い助成を受けているとされるが、民間部門では同社を競合相手として恐れるに足りないとしている。

運航助成や国営制度は、国内造船所での建造を保証するものであることがある。イタリア国営のTirreniaは自国のFincantieriに新造船を発注しているが、民営のGNVもやはりイタリア国内の造船所に発注を行っている。なお、Trasmediterraneaはスペインだけでなく日本にも発注している。

民営化が引き続き進行する現状からして、この問題はやがて解消されることになろう。

 

 

 

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