しかし、米国政府がより積極的な関心を持つべきだという見方も出てきた。「U. S. Naval Institute」の2000年1月号には、「海賊行為は今までにないほど危険なものになっている」と題する記事が掲載された。これは米国海軍の準公的出版物である。同記事の筆者は、海賊問題を説明し、この問題を防ぐために、国際協力が必要だと説いている。以下にこの記事の概要を転記しておく。
繰り返し発生する海賊問題のもうひとつの解決策は、国際法の管轄権を拡大して、海賊を訴追する法令も意思も欠けているように見える地域における有効性を高めることである。このようなイニシアティブはソマリアで効果を上げるであろう。発生海域にかかわらず海賊行為に対抗できる条約があれば、世界的な抑止効果があるだろう。海賊行為に対しては主権の限定原則を適用しないようにすれば、海賊の追跡及び訴追をより迅速かつ効果的に行うことができる。より厳しい規則を執行するために、IMOや国際海事局のような国際機関に警察力を付与するべきである。
管轄が拡大すれば、効率的に訴追が行えるようになる。現在国際海事局(IMB)は新たにRapid Investigation Serviceを設置して、訴追合理化努力を行っている。この事業は、2年間にわたり国際運輸労働者連盟(ITF)海員信託から11万ドルの助成金を受けている。この新サービスは政府に海賊襲撃について、航海の遅延を招く事なく、迅速に情報を提供するものである。このサービスで年間30-40件の被害事例が調査できると期待されている。これはIMBとITFによる注目すべき努力であり、今後も官民が継続して資金を提供することにより、強化されることが望まれる。
最後に、海賊対策を更に強化するために、海賊被害に関連した困難と苦痛について国際社会のより良い理解を得ることが必要である。IMB、ITF、IMOは民間の、そして国境を越えた努力にもかかわらず、海賊行為が依然として続いているということを各国に認めさせる努力を行っている。この努力を継続するよう奨励するべきである。たとえば、東南アジアでは、海賊問題はASEAN会議、アジア太平洋経済協力グループ、アジア太平洋安全保障協力会議のような地域会議のアジェンダとして取り上げられなければならない。
出典:U. S. Naval Institute「海賊行為は今までにないほど危険なものになっている」2000年1月。