高船齢化とOPA90による規制強化という状況にあっても、Title XIなしに建造資金を確保することは困難であり、Title XIがなければジョーンズ・アクト船の建造需要が顕在化したとは考えにくい。
3. 米国内建造要件に関する今後の見通し
米国は、2000年選挙が終わったばかりである上、大統領選挙は前代未聞の大混乱の末、ようやくブッシュ知事の当選が決まった。また、上院は共和党、民主党が各々50議席づつで全く同数(評決で賛否同数の場合は、上院議長である副大統領に決定権がある)、下院も共和党221:民主党212(無所属2)と拮抗状態となっている。
大統領選挙の混乱もあり、新政権や新議会の行方を見通すのは極めて困難な状況にある。
(新政権の見通し)
共和党のジョージ・ブッシュ・テキサス州知事が第43代合衆国大統領に就任することが決定した。しかし、大統領選挙の経緯や共和・民主両党が拮抗状態にある議会を踏まえ、ブッシュ新大統領は民主党からの閣僚起用も言明しており、既に本報告書でも内航保護制度支持者として度々名前の挙がっているブロー上院議員(民主党:ルイジアナ州)等の入閣が検討されている。
なお、大統領選挙中、ゴア副大統領(当時)は内航保護制度を継続すると明言していたが、ブッシュ知事(当時)は態度を明確にしていなかった。しかし、ブッシュ政権の発足経緯等を考慮すれば、少なくとも政権初期は現在の制度を維持するか、または見直すとしても極めて限定的な範囲にとどまることが予測される。
ブッシュ新大統領は非公式にアンドリュー・カード氏を大統領首席補佐官に据えることを表明しているが、カード氏はブッシュ元大統領(ブッシュ知事の父)時代に運輸長官を務めた経歴を有する。このほか、いわゆるポリティカル・アポイントメントの職(MarAd幹部等も該当)も順次任命されるが、ポリテイカル・アポイントメントは数千人に及ぶため、海事関係の政策担当者の顔ぶれや政策傾向などがはっきりするには、なお相当の時間を要するものと思われる。