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また、Rolls-Royceもシステムアプローチのニーズが海軍市場のみならず商船市場においても増大しているとの認識からVickersを買収し、総合パワーシステム、統合推進システムの設計・供給の能力を強化した。

 

II 合併・買収後の経営

合併・買収が成功するかどうかは、戦略的に大きな意味を持つ合併・買収案を立案し、実施することに加え、合併・買収後の経営が大きな鍵を握っているといわれている。今回取り上げた事例でも、それぞれ、組織、業務等の合理化や合併・買収による相乗効果の追及が行われている。

例えば、Hamworthy KSEは、管理部門の削減、サービスネットワークの統合・合理化を実施した。また、同社は、KSEのイナートガスシステム、再液化システムにHamworthy Marineのポンプを組み込むことによりシステムの向上を図り、製品・技術の相乗効果を得ている。さらに、同社は、合併した2社の共通製品であったポンプの製品範囲の統合に着手している。

Vickers Ulstein Marine Systems (VUMS)は、VickersとUlsteinの製造活動に関する組織の統合・合理化、販売・サービスネットワークの統合・合理化を実施した。また、仕事の手法の見直しが行われ、Account Management System、Market Segment Manager、Product Managerが新たに導入された。

なお、Rolls-Royceは、最近、統合計画の第一段階を終了したところであるが、これはVUMSの各事業を隈なく把握することが主目的であり、これから統合計画が本格化するところである。

また、合併・買収は、通常、文化、方針、仕事のシステム等の異なっていた企業が一つの組織の下に運営されることとなることから、合併・買収の成否は、合併・買収後の組織運営の円滑な実施にも大きく依存している。これに関しては、今回の調査では取り上げなかったが、Wartsila NSDの例が参考になる事例としてあげられる。

Wartsila NSDは、1997年4月、Wartsila Diesel、New Sulzer Diesel、Diesel Ricerche及びGrandi Motoriの合併により誕生したが、同社は合併各社の文化、方針、システム等が異なっていたことから、合併後Culture Trainingを実施した。また、事業の面でもPropacの提供(旧Wartsila Dieselと旧 New Sulzer Dieselが協力する必要があった)や排ガス技術等の技術開発における協力なども実施した。同社は、これらを通じ合併後の運営の円滑化を図った。

 

 

 

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