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第3章 欧州舶用企業の合併・買収の事例の調査結果

 

I Flender

1. 合併・買収の背景

1.1 グループの戦略

Flenderは、19世紀の末に設立されたが、1920年代までは歯車装置、カップリング、クラッチの製造を行っていなかった。同社はドイツのBocholtに本社を置き、従業員は全世界で約7,500人、総売上高は15億DM(825億円)である。1989年にFlenderはDeutsche Babcock Groupの一部になった。

Flenderは、過去3年にわたり従業員を大幅に削減している。これは多くの事業、特に電気式動力トランスミッション部門の事業を処分した結果と思われる。これは中心業務である機械式及び電気式動力トランスミッションの競争力を強化することを目指したものである。グループのレベルでは、Deutsche Babcockは、Flenderを含む同社の事業の処分を検討しているところである。これには2つの理由があるようである。第1に、現在のグループ傘下の多くの企業(Flenderを含む)はグループの中心業務以外の分野の活動に従事しているように思われていることである。第2に、Deutsche Babcockは現金の保有量を引き上げようとしていることである。なお、Deutsche Babcockは過去数年にわたり新しい事業を買収しておらず、またそのそぶりもないことから、現金保有量の引き上げの目的は、新事業買収ではなく、保有事業への追加投資と思われる。

 

1.2 合併前のFlenderとLohmann & Stolterfohtの活動

1.2.1 Flender

Flenderは据え付け動力伝達装置の分野で有名であり、セメント産業や鉄鋼産業への歯車装置並びに材料取扱い装置、プラスチック加工機械及び風力発電装置用の歯車装置のリーディング・サプライヤーである。

Flenderは、舶用の歯車装置を製造していた歴史はあるものの、1992年以降は製造しておらず、それ以前も小規模な製造しか行っていなかった。今日の舶用歯車の売り上げ(約64百万DM)は、同社が市場から撤退した1992年の売り上げ(3百万DM程度)の20倍と推定される。

現在まで、FlenderとLohmann & Stolterfohtはどちらも日本の舶用市場への参入意欲はあるものの、参入実績はない。日本の造船所で見られる国内サプライヤー優先が市場への参入を困難にしていると見ている。

 

 

 

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