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II 欧州舶用工業における企業合併・買収の最近のトレンド

合併・買収を促進する同様な要因が、欧州の舶用機械分野にも影響を与えている。コスト削減の必要性、機器パッケージの需要増加傾向及び技術革新の必要性が主な要因となっている。

この2〜3年の間、舶用機器分野では企業の合併・買収が相次いだ。最近の例としては以下のものが揚げられる。

 

(1) MacGregorグループ

スウェーデンに本拠を置く貨物取扱い装置のメーカーであるMacGregorグループは、フランスの厨房製品のメーカーであるTanel Internationalの買収により、旅客船、クルーズ船市場における地位を強化した。この買収により、MacGregorの既存の旅客船市場での活動(倉庫、冷蔵設備、エスカレーター、空調装置の供給)が補完され、現在、同社は厨房関係のトータルシステムの提供が可能になった。

 

(2) TIグループ

John Crane Marineの親会社であるTIグループは、オランダのプロペラメーカーであるLipsを買収した。Lipsの事業は、世界に数カ所の工場を持つJohn Crane Marineのグローバル活動に組み込まれた。TIグループは、英国のFTSE100 Indexに上場されており、1996年の売り上げは$29億であった。TIグループの戦略は、専門エンジニアリングに重点を置いた国際グループになることであり、特定のニッチマーケットにおいて技術上も市場支配上もリーダーシップをとれる重要事業を実施することである。TIグループは長い伝統を有するグループであるが、近年のリストラにより、39の事業売却及び45の買収を実施し、グループ内の会社の95%は設立後10年未満の会社になっている。

 

(3) YORK Refrigeration

世界最大の産業用・舶用冷凍システム・設備の供給者の一つであるSabroeは、米国の熱・換気・空調・冷凍設備の最大のメーカーであるYork Internationalに買収された。この買収により、世界最大の産業用・舶用冷凍システム・設備メーカー“YORK Refrigeration”が誕生した。YORK Refrigeration は、現在、6,800人の従業員を有し、年間売り上げは約$12億となっている。

 

(4) Ulstein Holding ASA

ノルウェーのUlstein Holding ASAは、ポーランドの会社FAMAの株50.08%をNKr7.5百万でStettin造船所から購入した。この買収により、Ulstein Holding ASAの子会社のUlstein Brattvaag ASAは、自社ブランドの錨や係船ウインチの販売が、特にポーランドや東欧諸国において強化されることを期待した。また、この買収は、比較的単純な製品を低コストで製造する能力もUlstein Brattvaag ASに提供した。FAMAは、Gdanskの南のGniewにあり、1997年に民営化されたが、約400人の従業員を有し、年間売り上げはNKr40百万である。

また、Ulstein Holding ASAは、商船と漁船の設計技術を持つノルウェーの設計会社Nordvestconsult ASの買収契約に調印した。この買収により、Ulsteinは船舶設計の世界的リーダーとしての同社の立場を強化するとともに、同社の伝統的な海洋補給船をベースとするサービス領域を拡大することが可能になるものと思われる。

 

 

 

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