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第1章 欧州における企業合併・買収の最近のトレンド

 

I 欧州における企業合併・買収の最近のトレンド

競争力強化のプレッシャーのもと、多くの企業は、新市場への迅速な参入によって株の価値を高めるための手段として、企業の合併・買収に頼るようになってきた。欧州における最近の企業の合併・買収活動に影響を与えている他の要因としては、以下のものがあげられる。

(1) 規制緩和とグローバリゼーションの速度の急激な増加(特に通信、ファイナンスの分野)。

(2) 国有事業の売却により、買収対象となる大企業が市場に登場するようになってきたこと(例:OlivettiによるTelecom Italiaの買収($348億))。

(3) 欧州統一通貨の誕生により、大きな金融市場が誕生し、同市場では為替リスクが無くなったことから、資金調達が容易になったこと。

(4)株式市場の好景気により、株価が上昇し、上場会社に資金的余裕ができ、非上場会社を買収しやすくなってきたこと。

 

自動車業界

1998年は、自動車業界の合併・買収の連続の始まりであり、クライスラーとダイムラー・ベンツの$405億の合併やフォードによるボルボの$65億の買収(未決定)があった。競争の激化により、設計や組立・生産技術の変更による大幅なコスト削減が迫られている。

 

銀行/金融業界

過去5年の間に総計$2,600億を超える合併・買収が行われた。このうち$10億を超えるものが70件以上あった。最近の銀行/金融業界における大型合併の連続は、拡大した金融サービスの“one-stop shop”に対する顧客需要の増大と国際市場における競争の激化が原因と思われる。さらに、この10年間のサービス方法の技術革新により、電話やインターネットが従来のビジネス手段をバイパスするようになってきた。

合併・買収の一例を揚げれば、英国で最大の銀行であったLloydsは、1995年にTSBを買収し、続いてCheltenham and Gloucester Building Societyを買収し、さらに最近ではScottish Widowsが2000年3月にLloyds TBSグループの傘下に入った。£70億の取引により、英国の生命保険、年金、信託に関する最大企業が誕生した。

 

以上の他、化学業界、通信業界、石油業界、医薬品業界、公共事業業界等でも企業の合併・買収が盛んに行われている。

 

 

 

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