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4. ソ連圏崩壊以降のポーランド造船業の構造改善

 

1980年代末以来、ポーランドは自由市場経済への体制の抜本的移行を経験し、現在では、OECD加盟の先進工業諸国との関係の方がはるかに深くなっている。同国の造船業について90年代に実行された構造改善の基本的方向は以下のとおりである。

 

・採算性がより高い部門、かつ旧東欧圏外の船主のニーズに合致するように建造船種を見直す。これにより既述のように、建造船種の範囲が大きく変化した。

・民営化へ向けての動き。ただしこの目標達成のスケジュールには、90年代前半に各造船所が遭遇した資金難により、大幅な狂いが生じた。民営化の狙いには、単に政府が不採算産業を支援する重荷を軽減することを意図しただけではなく、市場の競争原理にさらせば造船所自体が非効率、あるいは時代遅れの生産方法の撤廃を余儀なくされるだろうとの期待もあった。

 

4.1 民営化

主要造船所に株式会社の資格を与えて(ポーランド法では、これらの企業を民間部門に移行するにはこれが必要な前提条件である)、国有企業を広範囲にわたって民営化しようとするこの動きは、非共産化時代の最初の政権下で開始された。しかし、株式会社の資格は与えられても、国内の主要造船所の債務状況からして、買手にとって充分魅力的な投資対象となるには、いずれも経営基盤を強化する必要があった。そのため、以下のように各主要造船所について、一連の債務繰り延べ計画が策定された。

 

シチェチン造船所:

92年4月にシチェチン造船所とその債権者との間で、同造船所の債務に関連して構造改善取決めが策定された。債権者とポーランド政府は同造船所に対する債権の1/3を放棄し、その一方、シチェチン社は小口債権者に対して1ヵ月以内に債務残高を支払うことが要求された。大口債権者には、債務の残高を四半期毎の分割払いで5年間で返済することが決められた13

 

13 1998年にシチェチン造船所は債務を完済した。返済総額は1億5,600万ズローティ(約7,800万米ドル)に上った。旧来の債務に関しては責任を果たしたので、同社は今後、生産設備への新規投資の追加取得の面で資金調達の余地が広がったことになる。

 

 

 

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