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しかしグダンスクの窮境は続き、結局のところ当局は追加支援を求める訴えを斥け、96年6月に破産申立てを余儀なくさせた。

グダンスク造船所が抱えた問題には様々な原因がある。例えば過剰人員(特にホワイト・カラー)の人員整理や納期の改善ができなかったことが挙げられる。数件の契約で納期の遅れに対してペナルティーが課された上に、90年代前半の受注は非常に低い船価で受注した案件が多かった。技術的に時代遅れの設備、95年のズローティ高が、これらの問題を一層悪化させた。95年のグダンスク造船所は、売上げが伸び、手持工事量も隻数からいえば一見「健全な」状態であるにもかかわらず、3,600万米ドル前後の赤字を計上したといわれる。しかし同社の没落の主要因は流動性の不足だった。これに対処するため、新規受注の頭金をすでに建造中の船舶の工事費に回さざるを得なかった。結局、遣り繰りでは追いつかない額にまで債務が膨らんだ。

グダンスク造船所は、オープン・ハッチ式撒積船部門に参入するなど、何とか新造船活動の多様化を図ったが、破産は免れられなかった。オープン・ハッチ式撒積船の第1船は94年に受注した。同社のマーケティング戦略は個々の船主のニーズに的確に応える設計を提供することを中心とした。

 

船舶設計:

破産に至る前にグダンスク造船所が建造した船舶の例として、以下が挙げられる。

 

・48,000DWT型オープン・ハッチ式撒積船:このハンディマックス設計は2種類のバージョンが提供された。1種類は自前で荷役ができるように重量デッキ・クレーンを装備し、貨物倉容積は約62,000m3で木材輸送に適している。もう1種類は、ベイル貨物またはバルク貨物輸送用で、デッキ搭載のガントリー・クレーンを装備している。いずれも高張力鋼の使用を抑え、軟鋼の平均使用率は87%といわれる。

・1,500DWT型コンテナ船:数隻がドイツのSchoeller Holdings向けに建造された。この船型ではシチェチン造船所がすでに大手として地歩を確立していたので、グダンスク造船所にこれが発注されたことは注目される。

 

90年代半ばまで、同造船所は引き続き冷蔵船も建造していて、94年には14,800m3型4隻をDole Fresh Fruit向けに竣工させた。

 

 

 

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