日本財団 図書館


2. カンボジア運輸事情

 

はじめに

99年4月30日、カンボジアは、東南アジア10カ国の最後のメンバーとしてASEAN(東南アジア諸国連合)に加盟した。1967年創設からおよそ30年経て、域内人口5億人、GDP6,484億ドルを誇る「ASEAN10」の誕生である。

「ついに誇りある東南アジアの偉大な家族に加わり、ASEANの創設者たちの夢が実現した。我が国とASEANにとって重要な歴史の転換点だ。」ハノイで開催された加盟式典の席上、カンボジアのホー・ナム・ホン外相は、辛酸を経てようやく辿り着いた感激を込めてこのように述べている。

カンボジアは、1960年代まで米の輸出国で、50万トンも輸出した年もある。専門家によれば、「農地開拓、灌漑建設、土地改良が必要だが、カンボジア農業の潜在力はタイよりも大きい」ということである。また、タイ国境海域に隣接して天然ガスの埋蔵も期待されている。カンボジアを通ってタイとベトナムを結ぶ国際道路は、東南アジアの中でも特に各種産業が集積するタイの内陸部から、将来消費需要の見込めるベトナムや、中国、日本、韓国といった東アジア諸国へ輸出する有力なルートとして期待されている。

また、97年のクーデターでカンボジアに対する外国投資全体は減少したが、低廉な労働力を背景に投資を増やしている産業もある。たとえば、カンボジア投資委員会により承認された縫製業関連の投資件数および登録資本金額は、95年に27件(2,000万ドル)、97年105件(1億300万ドル)、98年は第3四半期まで75件(9,100万ドル)と増加している。カンボジア縫製業協会の会員数も95年発足当時の27社から現在では160社に増加している。今後安定した政治状況が続けば、再び外国投資の伸びも期待できよう。

本レポートでは、99年7月のカンボジア訪問の際収集した資料をもとに、近年のカンボジア運輸事情を報告する。

 

1. カンボジア経済の概況

(1) カンボジアは97年7月の武力衝突以来、外国からの投資と援助の激減、観光客の減少、干ばつと害虫被害によるコメ不足などで経済危機に陥っている。キエット・チョン財政経済相によれば、98年の実質国内総生産(GDP)伸び率は目標値の3.5%を割り込み3%にも達しなかった。国民1人当たりのGDPは280米ドルだった。同相は、99年の成長率目標4%の達成は、国際援助がなければ不可能とし、貧困撲滅や農業改革、治安回復に向けた政策を早急に打ち出すことが必要と指摘している。カンボジアの成長率は90年当時2.8%に過ぎなかったが、93年の総選挙後に外国投資が増加したことで96年には6.5%を記録していた。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION