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両社の計画によれば、計30隻の同クラス潜水艦建造プログラム全体を通して、このチームアップによる共同建造方式が取られることになっている。

 

当初、米国海軍はバージニア級潜水艦3隻の発注を予定していたが、両造船所に建造シェア契約に合意させるためのインセンティブとして第4艦の発注を前倒しすることにより、同契約の実現をバックアップした。また、4隻の潜水艦の「まとめ買い」発注により、両造船所はそれぞれの納入業者とコスト低減に関する契約を結ぶことが可能となり、全体の建造コストを低く抑えることができる。

 

このチームアップ契約により、原子力潜水艦の建造については今後長期にわたって両造船所間の競争は実質的に消滅したと考えるのが妥当である。

2-4(2)において記したように、ニューポート・ニューズ造船及びアボンデール・インダストリーズの合併合意に対抗して、ジェネラル・ダイナミクスは1999年2月にニューポート・ニューズ造船に対する買収提案を行った。本買収についてジェネラル・ダイナミクスが成算ありとみた背景には、両造船所の事業の中核である空母及び潜水艦の建造については既に競争が消滅していることから、両造船所の合併は反トラスト法上も問題は少ないであろうと踏んでいたものと考えられる。実際には国防総省は「原子力潜水艦の建造造船所が1社になる」ことを主な理由として同買収提案を却下したが、多くのアナリストは国防総省が両造船所の集約化に反対したことに反トラスト法上の根拠は現実には存在しないと見ている。これらのアナリストによれば、国防総省の反対は純粋に政治的動機によるものであり、両造船所の集約化が将来的にはいずれかの造船所の閉鎖につながることが明白であるため、国防総省が本買収を認めれば閉鎖による労働問題を懸念する声が政治的にも大きくなることを避けたためと見ている。

原子力潜水艦建造のペースが今後も年間1隻程度のレベルに留まるとすれば、遅かれ早かれ両造船所の集約化の話は再浮上することは確実と考える向きも多い。また、建造シェア契約はコスト効率が悪く、長期的にはいずれかの潜水艦建造施設を閉鎖する決断を下さざるを得ないとの見方も強い。

 

 

 

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