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(2) リットン・インダストリーズによるアボンデール買収

1999年8月2日に、リットン・インダストリーズはアボンデール・インダストリーズ(ルイジアナ州ニューオーリンズ)を5億2,900万ドルで買収する手続きを正式に完了したが、これに至る過程は非常に複雑で興味深いものであった。

 

(ニューポート・ニューズ造船とアボンデール・インダストリーズの合併合意)

1999年1月19日に、ニューポート・ニューズ造船及びアボンデール・インダストリーズのそれぞれの取締役会議が、両社の合併による新会社「ニューポート・ニューズ・アボンデール・インダストリーズ」の設立を承認した。合併はアボンデール株35.50ドルに対するニューポート・ニューズ株の提供により行われることとされた。1999年1月19日のニューポート・ニューズ株価(29.69ドル)をベースにすると、交換比率は1:1.196となり、時価相当額で約4億7,000万ドルの株式提供となる。

 

ニューポート・ニューズ造船(NNS)(バージニア州ニューポートニューズ)は、1886年に創立された造船会社であり、現時点において南北アメリカ大陸最大の造船所である。1998会計年度の売上高は18億6,000万ドル、1998年末における従業員数は18,200人である。同社がこれまでに建造してきた海軍艦艇は極めて広範にわたり、多数の商船の建造実績も有している(次頁の表を参照のこと)。

海軍艦艇の建造分野においては、原子力空母の唯一の建造造船所であり、原子力潜水艦についてもジェネラル・エレクトリックと市場を分け合っている。また、ミサイル巡洋艦、駆逐艦等の水上戦闘艦や、各種揚陸作戦艦艇の建造も多数手がけてきた。一方、商船の建造実績についても、タンカー(ULCC2隻を含む)、コンテナ船、LNG船、旅客船等多岐にわたっている。1980年以降は専ら海軍艦艇の建造とオーバーホール工事を手がけ、約6割が空母の建造又はオーバーホール、残り約4割が潜水艦の建造又はオーバーホールであった。クリントン政権により復活・拡充されたタイトルXI融資保証による支援を受けて、1994年以降輸出船を含む46,500DWTダブルハル・プロダクトタンカー9隻を受注したが、同建造に伴い巨額の損失を出したため、1998年3月には、9隻のうちの3隻をキャンセルするとともに商船建造市場からの撤退を発表した。

 

 

 

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