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第3章 インドネシア造船所の調達状況

 

造船所にとって調達能力というのは、競合力を高めていく上で非常に重要な要素である。この能力が、造船所で行われる新造船建造や修繕に必要となる資材供給を左右するからである。すなわち調達能力の如何によって、造船所の造船及び修繕能力が決まることになる。

調達能力はあらゆる要因によって影響を受ける。造船所内で管理可能な内的要因以外に、造船所の手の及ばない数多くの外的要因によって、造船所の調達能力は左右される。影響を及ぼす外的要因とは、国内のサポート産業の進展状況や、量的または質的な、あるいは物理的または制度的なインフラ条件である。事実、調達における外的要因がインドネシアの造船所の業績に与える影響は重大である。地場産業からの支援の欠如や物資調達のインフラ条件が、特に高性能エンジンやタービン、精巧な通信・航海機器といったハイテク製品に関して、輸入に大きく依存する体質をもたらしている。

 

3.1 調達実績

調達においてインドネシアの造船所の業績に影響を与える主な外的要因は、調達の過程で起こる遅延に代表される。一般的に調達における遅延は、内的遅延と呼ばれる内的要因によって引き起こされるものと、外的遅延と呼ばれる外的要因によって引き起こされるものに区別される。

内的遅延の中で最も顕著なものは、調達活動の計画管理に消費される時間である。調達計画は、造船所が契約後に船主より船の基本設計を受け取った時点で開始される。大半のインドネシアの造船所では船の設計を行わずに、船主より与えられた設計図を使う。造船所はこの設計図から必要な機材や部品を割り出し、調達計画を立てる。現在大部分のインドネシアの造船所は、コンピューターを使わずにこうした計画を立てている。インドネシアでは、調達活動に情報技術が効果的に活用されていないというのが一般的な現状である。こうして、調達活動にはかなりの遅れが発生している。

もう一つの重要な内的遅延とは、調達先の選定および候補となった業者との交渉にかかる時間である。この場合の遅れは造船所経営者の手腕によるばかりでなく、地元のサポート産業の進展状況や造船所とサポート産業との通信に必要な設備がどれだけ整っているかにかかってくる。

 

 

 

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