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この結果、投下された資本は低い利回りしかもたらさず、株主への配当が乏しくなる結果となる。こうしたことから、ほとんどのIPOは、既存の市況のもとでの確実な業務実績に頼るのではなく、むしろ、投資家が期待する投資の配当が達成できるような市場の改善を期待して行われる。

海運業の統合の進展や、経営者による、より焦点を絞った専門的な取り組みによって観測筋の中には、資本の利回りを改善し、公開投資の投資家たちが改めて関心を持つ結果をもたらすことを期待するものもある。しかし、これは、業界の多くの側面が業界のコントロールの枠外であるという事実(特に造船供給の大幅な余剰)を無視している。こうした過剰供給力は、予見しうる将来において、供給に対する需要の改善を急速に消滅させ得るし、また、そうなるであろう。その結果、相変わらずの配当は気まぐれということになるであろう。

人によっては、海運業では、資金不足の会社が過剰であるとの意見もある6。低い資本価値は、小規模な取引活動という結果を生み、市場の需要によって動くアナリストの関心を欠くことになる。このため、こういった会社は、追加資本を調達する可能性や事業拡大にその株式を利用する可能性をなくしてしまっている。代わりに、広く知られるための出費と経営努力を払い、また、多くの場合、会社を純資産価値より低い価格での企業買収へと導くのである。

世界の海運会社の初期公募(IPO)は、1993年で総計657百万ドルであった。その後のIPOは、散発的に行われるのみで、総計799百万ドルに過ぎない。第2次発行は、より多くの海運会社が上場されるに従って、勿論多くなるであろう。1993年以来の第2次発行は、30億ドルあまりであった。クルーズ会社が主要発行人であり、IPO及び第2次募集総計のおよそ25%を占めている。主なIPOと第2次募集のリストを表5.Gに示す。

 

6 Peter Stokes 「Ship Finance」 第2版

 

 

 

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