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5.3.9 財政-レバレッジ

財政レバレッジは、会社の方針及び船舶価値の変動に伴う市況によって、企業毎に異なるであろう。船舶資産を帳簿上市場価値とすることによって、「隠匿積立金」を生み出し、それによって財政レバレッジを向上させることができる。市況が良く、そのため中古船価が強含みの間は、市場にあわせた帳簿のバランスシートでは、レバレッジが30%と低く示されるであろうが、反対に市場価格が下がる不況の場合には、バランスシートのレバレッジが、75〜100%のレベルまで上がることもあり得る。経理上のバランスシートは、将来の財政的な安定の指標としては乏しいものであることが多く、貸出人は、市場評価額を入手するのが通常である。

 

5.3.10 財政-キャッシュフロー

船舶ファイナンスのキャッシュフローのコスト分析は、ミクロあるいはマクロの双方で行うことができる。ミクロ分析では、船舶所有者からの詳細な情報や、関連のコストを個々に比較する能力、その後の運航に係る変数を正確に予測する力量を必要とする。定期債務の分析の対象とする期間中に、30〜45日の航海がどれだけ可能かを考えると、このアプローチの仕方がいかに複雑であるか理解できよう。それ故に、マクロ分析の方が、より頻繁に用いられるのである(特に平均1日あたりのランニングコストの分析には)。

キャッシュフローの収入分析は曖昧な科学である。収入はその量や性質において、船舶が従事する事業分野の現況や海運事業のタイプによって変化する。単純なドライ及びウェット・バルク部門では、船舶について最もあり得る低運賃(あるいは係船運賃)は、過去の最低運賃(運航コストに関連)と、関連船腹の平均的な競争力の船舶における穏当な資本配当をもたらす運賃との間になるであろう。時によって、また、供給が逼迫しているときには、一日あたりの運賃収入が、上記で述べたものをずっと上回ることもあり得るが、それがそのまま持続することは希である。これほど変動は激しくないが複雑な輸送産業型の事業部門では、契約の条件あるいは黒字を保証する契約、株主の戦略や競争方針、事業分野の中期的展望等といった全てのものが、将来の運賃に影響を与えるであろう。定期用船が可能な場合には、貸出人は、現実的な信用貸しをし、チャーター・リスクの商業査定をしなければならない。この様な用船がキャンセルされた場合、船舶そのものの本質的価値は、契約条項や輸送産業型の海運事業と関わりなく、専門性の薄いバルク部門の船舶に、より関連が強くなるであろう。船舶の潜在的収入を査定する場合、ドックや検査のための不稼働日数や、船舶が長期の定期用船契約に基づかず運航している場合の通常の稼働率を考慮に入れるよう、注意しなければならない。

もし、穏当で控えめなコストと収入の推測をもとに、操業及び資本コストに見合うに十分な収入を生み出し、適当な余剰流動性を生み出すとすれば、キャッシュフローのリスクが貸出人にとって受け入れられる範囲であるとみなされる。十分かつ自由になる企業流動性がない場合には、余剰所得により構築された現金のクッションがあることが非常に大切である。もし、操業コストや資本コストを賄い、経営流動性のクッションを得る上で、控えめな推定により算定される収入より高い収入が必要となる場合には、この様な将来の収入に対して、「業界的見解」が取られることになる。この様なアプローチの方法は、融資される船舶が単独プロジェクトである優先弁済貸し出しには、通常は適当ではない。これに対応するために、3つの基本的方法がある。

 

 

 

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