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5.3.6 担保-収入

ほとんどの船舶は、一定期間、用船される。ドライ及びウェットバルクの分野では、一般的に、この期間はl5-40日の航海用船である。連続的な航海用船から20年の定期用船といった長期間の用船もある。用船料譲渡条項のもとでは、借入人は所得を受ける権利を貸出人に委ねる。この条項は用船者に通知される。海運業界では、時として、多重の用船契約を結ぶことがあるが、こういった契約は、所得受領の資格及び他の保証双方について、貸出人の権利を著しく減少させる可能性がある。このため、貸出人は、通常、貸出人の承認の無い限り、標準的な期間用船か航海用船のみの契約を主張する。用船料は、通常、貸出人が指定した貸出人の名義の口座に振り込まれ、口座の金は貸出人の担保とされる。この口座の用船料の引出し条件は、借入人との間で取り決められる。その内のある程度は、次回の元本や利息の返済のための「償還基金」として取っておくこともある。企業借入人の場合には、口座は、貸出人が管理することを決定するまでは(債務不履行等の懸念がある時など)、借入人の完全なコントロールの下にあることが非常に多い。

 

5.3.7 担保-保険

船舶の担保は、債務償還期間中貸し手を守っている。船舶が破損したり、あるいは、喪失してしまって、貸し手が頼るべき実際の資産を持ち得なくなった時の保証として、保険のカバーが必要である。保険の主な形式には以下のようなものがある。

・ 船体保険

・ 戦争及び襲撃保険

・ 損害賠償保険(P&I)

これに加えて、貸し手は抵当権者としての特定の利益を保護するための保険にも加入できる。

 

5.3.8 財政-流動性

海運会社の財政構造は事業活動のタイプによって、多様である。純粋な「商品取引」型の海運業者で、スポット市場で不定期用船で営業している会社では、比較的低い運転資金で済み、船舶のタイプや容量によって異なるものの、一般に船舶あたり$25万〜$75万である。「輸送産業」型の会社、特に定期航路運航事業者は、それよりずっと高い運転資金が必要であろう。バルク商品市場にまともに影響されている企業では、短期的な過剰流動性(すなわち運転資金の目的で必要とされるもの以上の流動性)は、契約で守られている「輸送産業」型の海運業者より高いであろう。余剰現金流動性は、不景気の時にも会社が債務の返済能力を持ち続けて、それにより、貸し手が債務不履行に悩まされたり、株主が資産処分を余儀なくされることから守るための要である。

一杯船主企業のプロジェクト取引では、余剰現金収入が、プロジェクト機構のなかに組み込まれるようにすることが重要であり、これを確実ならしめるメカニズムをローンの契約条項の中に入れるべきである。いかなる場合も、借入人が過剰流動性を有していることが好まれる。そうでない場合、次に魅力ある流動性の形態は、支配権を持つ親会社のコントロールのもとに置かれることである。

 

 

 

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