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システム評価および従来技術との比較を行う際の評価方法としては、以下の2種類の評価基準を用いることとする。1]は吸収・吸着サイクルの成績係数(COP)に相当し、2]は圧縮式サイクルの成績係数(COP)に相当する。本検討例のように、従来捨てられていた排熱を駆動源とするシステムを既存システム(圧縮・吸収・吸着など)と比較する場合、基準とする熱量(エネルギー)を明確に規定して、比較対象と目的に応じて評価基準を選択する必要がある。

1] 冷熱変換効率:ηH=(冷凍能力:kW)/(回収排熱量:kW)

2] システム成績係数:COPs=(冷凍能力:kW)/(消費電力:kW)

 

2.1.3 サイクルの特徴と作動特性

エジェクターの性能は・抽気ガスと駆動ガスとの質量流量比ηで表される。図4に示すように・エジェクター吐出圧力Pc(凝縮圧力)がある値を超えると急激に性能が低下する臨界点(許容背圧)が存在する。また、圧縮式など他のサイクルと異なり、凝縮温度を低くしても性能が向上せず一定値となる特性を示す。これは、上流の超音速流には下流の情報(凝縮温度、凝縮圧力など)が伝わらないため、駆動ガスや抽気ガスの挙動に影響を及ぼすことができない、という超音速特有の現象によるものである。超音速から亜音速流れへの遷移の過程で生じる垂直衝撃波は、吐出圧力が臨界値より十分低い場合には、混合部下流(図2におけるt2付近)で発生するが、吐出圧力の上昇とともにその位置は上流側へと移動する。混合部最上流で衝撃波が発生する場合の吐出圧力が臨界圧力となり、それ以上の圧力では衝撃波が消滅し、亜音速流れとなり性能が著しく低下することになる。

従って、ヒートポンプサイクルの運転は、擬縮圧力がその条件における許容背圧以下となるように行う必要がある。

 

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図4 エジェクターの作動特製と臨界点

 

2.1.4 最適作動媒体の検討

前述のように従来のエジェクターは、水を作動媒体とするものがほとんどであった。従って、作動圧力が高真空となることや装置が大型化するという問題点があり、広く普及するには至っていないのが実情である。そこで本研究では、自然作動媒体を中心に作動圧力や温度を指標として候補媒体を選定し、システム性能計算を行った。表1に結果を示す。エジェクター性能や作動圧力より、イソブタンとHFC236faを最適媒体として選定した。

 

 

 

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