2.1 エジェクターの概要
エジェクターヒートポンプは、作動媒体の持つ運動エネルギーを利用したジェットポンプの一種であり、排熱回収によって昇圧された作動媒体ガスを駆動源として冷熱を得るサイクルである。以下に、作動原理やサイクル特性など、エジェクターの概要を示す。
2.1.1 基本構造と作動原理
エジェクターの作動原理は、霧吹きで水が吸引される現象と同じもので、高圧の駆動ガスをノズル部で超音速まで加速・減圧することにより、低圧・低温のガスを吸引し、冷熱を発生させるものである。ここでは駆動ガスの圧力エネルギーが速度エネルギーに変換されることにより排熱が冷熱変換されたことになる。この超音速の混合ガスは、ディフューザー部で衝撃波発生を伴って減速・圧力回復する。ここでは速度エネルギーが再び圧力エネルギーに変換されることになる。このように、エジェクター本体では作動媒体の相変化や化学変化などはなく、単純に媒体の加速(減圧)と減速(昇圧)によるエネルギー変換のみが行われることを特徴としている。エジェクターを冷却装置に適用すると、従来の排熱駆動型ヒートポンプには見られない種々のメリットが生じることになる。
図1に、エジェクター式冷凍装置の特徴を示す。
エジェクターの構造は図2に示すように、ノズル部・混合部・ディフューザ部の3つの部分で構成されている。高圧の駆動ガスはノズルで加速され、のど部t1において音速に達する。その後さらに加速され、抽気(吸入)ガスを吸引しながら超音速流れとなって混合部に入る。このディフューザのど部に相当する混合部のある点において、垂直衝撃波が発生し亜音速流れとなり、ディフューザ部で減速・圧力上昇して吐出される。
2.1.2 ヒートポンプサイクルと評価方法
エジェクターを用いたヒートポンプは図3に示すような構成となる。ボイラーで排熱を回収した作動媒体は高圧の駆動ガスとなり、ノズル部で減圧膨張し、蒸発器からの吸入ガスを吸引・混合した超音速流れとなり、ディフューザ部で減速・圧力回復して擬縮器で液化される、というサイクルを構成する。