日本財団 図書館


(2) 燃焼、スラスト用分割式ピストン

シリンダライナのスリットの長さと幅、ピストン棒および連接棒の長さは機関の機構上および強度上で重要な項目であり、2分割式ピストン機構の検討を行い、機関高さが最小になる最適寸法を決定した。

シリンダ内最高圧力および慣性力の増加に対して下記に示す各部の強度検討を行い強度上の問題がないことを確認した。

燃焼ピストン 燃焼面の機械的強度(肉厚)。取付ボルトの強度。

ピストン棒 幹部の圧縮応力、座屈安全率。取付ボルトの強度。

ピストンピン ピストンピンメタル、ピストンボス部の面圧。ピストンピンの曲げ応力とたわみ。

連接棒 ピストンピン軸受部の強度。クランクピン軸受部の強度。幹部の圧縮応力、座屈安全率。

なお、燃焼ピストンの熱応力についての検討は試験機関で温度計測を実施し、その結果を基にして検証を行う予定である。

(3) 運動部慣性力増大への対応

SLTは従来にないロングストローク機関であり運動部重量による慣性力が増加する。

2分割式ピストンを採用することにより運動部の重量増加を極力抑えた。また、連接棒は強度を保持したままで重量を軽減する形状を採用した。

(4) ピストン潤滑およびピストン冷却

SLTはストロークが長いため、ピストンの摺動距離が長くピストン速度が大きい。また、クランク軸による潤滑油の跳ねかけは期待できないため、従来の機関と比較して潤滑条件は厳しくなる。したがって、燃焼ピストンの潤滑にはシリンダ注油方式を、また、スラストピストンの潤滑にはピストン冷却油を利用することとした。

ピストン冷却油は慣性力の影響を受けるため、連接棒内の油通路に逆止弁を装備し冷却油の供給を確実にする。また、試験機関でピストン燃焼面の温度計測を行うことにより冷却効果の確認を行う予定である。

(5) CO2低減(低燃費化)とNOX低減の技術

吸排気の流路抵抗軽減のために吸排気弁は弁径を大きくすると共に、シリンダライナにバルブ逃がしを設けない構造とした。また、燃料噴霧の拡散を確実にするために燃料弁は2弁式を採用した。

試験機関にて給気圧の上昇、燃料噴射系、吸排気弁の開閉時期等のマッチング試験を行い、最適条件の選定を行う予定である。

(6) カム軸駆動系

カム軸駆動装置は、従来、歯車駆動方式を採用しているが、SLTはストローク増加に伴いチェーン駆動方式を採用し、部品点数削減によるコストダウンを行うと共に、振動と騒音の低減を図った。

また、チェーン駆動方式を採用することにより、カム軸配置の自由度が大きくなった。

(7) 逆転機構

逆転機構は、カム軸スライド方式を採用した。カム軸とチェーンホイルの結合部は、動力の伝達が確実でスライドが可能な新機構を開発し、カム軸のスライドストロークを短くするために新形状の燃料カムを考案した。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION