2.7 加速試験
2.7.1 概要
上記技術を統合したセラミックス複合塗料の耐久性を調べるために、加速試験方法の従来技術調査を実施して試験条件の検討を行い、3年間の使用条件に見合った加速試験を実施した。
2.7.2 加速試験に関する技術調査
長期耐久試験について検討するために、現在までの技術動向をJOIS文献検索サービスを用いて調査した。調査は日本語文献について1980年以降のものについて行った。キーワードと適合数を表9に示す。船舶用塗料に対する長期耐久性、加速試験に限定した試験方法は現在のところ見られていない。自動車用塗料については、紫外線や雨水、海水飛沫に対する加速試験方法があり、そのための加速試験機が一般的に用いられている4)。しかし、常時水中に没している船底用塗料の場合には、自然の海中に年単位の長期にわたって塗装板を浸漬する試験や5)、船舶に実際に塗装し航行させる試験方法が見られるものの6)、航行についての加速試験は見られない。
※ キーワード表紀中、×は両方のキーワードを含むもの、+はどちらかのキーワードを含むものを示す。
2.7.3 加速試験方法の検討
そこで、今回は下記の条件で加速係数を決定し、3年間に相当する試験を行った。まず、リグ試験装置のn=3300rpmとすると、線速度は62.20km/時となり、一般的なタンカーの速度を15ノット(1ノット=1.862km/時)とすると、本年度の試験速度はタンカーの2.24倍となる。次に長期使用時に生物付着以外で摩擦抵抗増加の原因となるのは、塗装膜を水や塩分が透過して鋼板に達した時点から始まる現象であり、例えば錆の発生、また接着強度低下や塗料自身が吸水することによって塗料表面が膨れ、表面粗度が大きくなることである。そこで文献を参考に7、8)、試験に用いる水温、塩分濃度を高くすることによって、一般使用条件で長期間になる負荷を短期間で与える試験が可能となると考えた。例えば水温を50℃にすることで、4〜5倍の加速試験とすることが可能である。
以上の条件をそれぞれ乗算して加速係数を10と決定した。ここで、3年間(=26280時間)での実際の航行日数は全日数1095日の2/3倍であると仮定すると6)、実際の航行時間は17520時間となり、加速係数10とすれば、実際の航行時間を加速係数で除算した時間である1752時間の加速耐久試験で3年間に相当する試験を実施したことになると考えた。
2.7.4 加速試験
2.7.3の検討から1800時間の加速耐久試験を実施した。一般的な海水濃度3.4%の2倍にあたる6.8%の人工海水の素(八洲薬品殿製、アクアマリンS)を水槽中の水道水に加え、石英ヒーターで50℃定に保温した。2.6で使用した、酸化チタンゾル・窒化ケイ素複合塗料を塗布して研磨したローターをリグ試験装置にセットし、回転数3300rpm、1800時間運転した。そして基本的に168時間おきにトルクを計測した。試験は基本的に1日10時間、週5日間のペースで実施した。