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4 環境税の導入

 

地球温暖化問題が論議され始めた当初から、経済的対策の一つとして論議されていたものが炭素税やCO2税といった方策である。これらの課税は温室効果ガスの放出によって生じる影響を外部コストと考えることを根拠としており、課税によって環境負荷の大きい製品や活動のコストが上昇し、ひいては環境負荷の小さい選択肢が選定され易くなることを期待するものである。

環境税の導入は既にヨーロッパの国々で事例がある。表3.4-1は2000年時点における状況であるが、CO2やSO2、NOx等の種々の環境汚染物質に対する課税の事例が認められる。物品税として既に燃料等に課税されている場合でも、上乗せ課税を実施する場合も認められる。例えば、オランダでは重油に対して31EUR/tonの課税を行っているが、このうち物品税に相当する部分は16EUR/tonで、一般エネルギー税(環境税の一種)に相当する部分は15EUR/tonである31

このように、ヨーロッパでは種々の環境税が既に実施されているものの、様々な問題を抱えている事も事実である。

環境税を導入した国のほとんどがその相殺に物品税や所得税の減税を実施しているのが実態である。例えば、スウェーデン、デンマーク、オランダ、フィンランドでは個人所得税の引き下げと相殺し、ベルギー、デンマーク、オランダ、フィンランド、ドイツ、イギリス、イタリアでは社会保険や雇用保険料の削減を同時に実施している。また、スペインは環境税の導入と同時に新エネルギー開発計画の助成及び道路税を削減した。

課税の見直し等も早くもみられており、イタリアでは燃料価格が上昇しすぎたとして1999年に導入したCO2税の税率を早くも削減した。また、環境税のイニシアチブを握っているイギリスでも課税が行き過ぎたとして環境税の税率削減の動きがある。その他、スウェーデンのように名目上は燃料の利用に課金をしているものの、表7.3-4のように種々の控除によって名目上の税率に対する実質の税率は1/3程度になっている場合も見受けられる1

 

表3.4-3 スウェーデン(2000年)における工業分野での燃料使用に対する課税の状況

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Stephan and Ekins(2000)から引用

 

以上のように、単一の国においても環境税の導入は何らかの減税策と並行して実施されることが通常で、また燃料価格等の面から見直されているケースも少なくない。まして、船舶輸送のような多数の国の便益が関連する場合は、各国経済への影響も含めた、十分に慎重な論議が必要であると考えられる。

 

31 S. Stephan and P. Ekins(2000) Recent Trends in the Application of Economic Instruments in EU Member States plus Norway and Switzerland and an Overview of Economic Instruments in Cent ral and Eastern Europe. Update of Environmental Taxes and Charges. Report to DG Environment. Contract No.B4-3040/99/123779/MAR/B2.

 

 

 

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