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(1) 短期的削減方策

ここでは、概ね2010年頃までに実施可能なものを「短期的削減方策」と位置付け、新造船への早期代替、推進器に対する改良技術の広範な普及、CO2以外の温室効果ガスの排出削減、船舶の大型化及び減速航行を挙げる。

 

1] 輸送エネルギー効率の良い新造船への早期代替

輸送量あたりの燃料消費量である輸送エネルギー効率は、運航業者のコスト削減の対象として、その改善にはこれまで多くの努力が払われてきた。船舶はもともと大量輸送機関としての優秀性があり、内航海運の平均的な輸送エネルギー効率は営業用トラック輸送のおよそ1/5程度、外航海運では航空輸送はもちろん全ての陸上輸送に比べて圧倒的に輸送エネルギー効率が高い。

輸送エネルギー効率は、輸送の高速化などの要因により1980年代半ば以降は横ばいあるいは若干悪化しているが、それ以前は1980年代までおしなべて大幅な改善がみられ、1970年代初頭に比べると概ね20%程度の効率向上がみられる。これには機関、船型の改良など燃料消費量削減技術の開発普及が最も大きく寄与しているが、コンテナ輸送や専用船化などによる荷役効率の向上も寄与している。

船舶の経済寿命は比較的長く、現時点でも1970年代あるいはそれ以前に建造された輸送エネルギー効率の悪い船舶も就航していることを考慮すると、これらの高船齢船を効率の良い船舶に早期に代替することが考えられる。

早期代替の効果については次のように見積もられた。

タンカーでは、ゼロオプションにおいてすでに早期代替を見込んでいる(MALPOL条約13G規則に従う)ため、削減効果はない。一方、バルカー及びコンテナ船では、2010年前後まではゼロオプションに比べて燃料消費量(=CO2排出量)が減少すると考えられ、その効果は数〜5%程度と見込まれた。しかしながら、高船齢船の代替が1サイクル終了した後は、改善効果は生じないため、その後は輸送総量の伸びに応じて燃料消費量が増加しつづける。2010年代後半にはゼロオプションにおいても高船齢船の代替が追いつくため、2020年での効果をみると(表7.2-1 対策1参照)、輸送エネルギー効率の改善はわずか0.4%にとどまり、第1評価基準のレベル達成には遠く及ばない。また、CO2排出量はゼロオプションに比べて0.6%の削減であり、1997年に比べればupper caseで約74%の増加、lower caseで約38%の増加になるものと見込まれた。

 

2] 輸送エネルギー効率改善技術の導入

(推進器に対する改良技術の広範な普及)

短期的に導入可能な燃費改善技術として、機関の熱効率の向上、船体の改善による造波抵抗及び粘性抵抗の減少、推進器の効率上昇、などの要素技術を5.1.3節において検討し、削減効果、導入コスト、適用範囲の広さなどから、有望な技術を抽出した。

その結果、機関の熱効率については、現在はNOxや低質燃料への対応が主体となっており、近い将来に大きな改善は望めないと予想された。同様に、船体の改善による造波及び粘性抵抗の低減も、CFDなどの新技術の改善が進んでいるが、その適用は事実上新造船に限られると考えられた。

 

 

 

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