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Arabian lightで20℃の条件下におけるタンク内の原油ガス(炭化水素類)濃度の推定値を図2.1-6にまた、同じタンク条件下における石油備蓄基地における実測値10との比較を表2.1-3に示した。

 

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図2.1-6 原油備蓄タンク内のVOC濃度の推定(鬼塚ほか、1980)

 

表2.1-3 原油備蓄タンク内のVOC量の実測値例

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実測値は上五島原油備蓄基地環境影響評価書資料より

 

これらにより明らかにように、タンク中のVOC濃度は数度にわたる原油注入に応じて鋸歯的に変化するが、シミュレーションの結果はこの状況を良く再現しており、上記の予測式の妥当性が認められた。

 

2] 原油タンカーにおける原油荷積み時のタンク内原油ガス量の推定

次に、上記の予測式を用いてタンカーへの積み荷時の発生VOC量についてシミュレーションを行った。予測に際してタンク内の深さ、原油入荷速度などの値は実船調査から得た。

実船調査の詳細は表2.1-4のとおりである。タンクからのガス採取では、手動でテトラバッグへガスシリンダー(SKC製、VAC-U-TUBE)を用いて200mlを採取し、船外でFID(水素炎イオン化検出器)法により定量分析を行った。

表2.1-5はバラスト航海時の原油タンク内におけるガス組成をタンクの深さ別に示したものである。深さ方向には、TOCで最大0.9%程度の濃度差が見られるが、メタンなどの組成比には偏りは見られず荷室内ガス中のおよそ0.6%を占めた。表2.1-6はタンク内のガス組成に対しての原油洗浄の影響を示す。荷揚げ中に原油洗浄を行った場合、タンク内VOC濃度は10%程度から15%程度増加している。なお、荷揚げ後24時間経た場合のガス組成濃度は洗浄の有無に関わらずほぼ一定であった。

 

10 上五島石油備蓄公社、環境影響評価書より計算。入荷前にはタンク内の圧力を800mmHgに調整するため何度かタンク内のガスの放出が行われる。この際フレアスタックへのイナートガス中濃度を測定したもの

 

 

 

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