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ノルウェーなどから、技術的な対策技術の強制措置といった方策だけで同ガスの削減を図ることは困難であり、市場原理に基づく方策の導入が必要であるといった提案が出始めており、技術的検討以外に、CDM及び船舶間での排出権取引など市場原理に基づく削減方策も議論する時期にあると考えられた。

 

4.7 外航船舶の運航に伴うCO2など温室効果ガス削減に向けての提言

外航海運は、輸送エネルギー効率の面から見ても極めて優れた輸送機関である。その輸送活動に伴う温室効果ガスの排出は、基本的には各船舶の輸送エネルギー効率と輸送する貨物の輸送総量に依存する。

前者の輸送エネルギー効率の改善のためには、比較的速やかに導入可能な短期的削減方策(たとえば高船齢船の早期代替、推進器の改善技術の広範な普及、CO2以外の温室効果ガスに対する対策)により、本調査において第一評価基準として掲げた単位輸送量当たりの温室効果ガスを6%削減するという目標は概ねクリアできるものと予想された。中長期的な効率の改善については、LNGや水素等の代替燃料を用いた機関やマイクロバブル等による抵抗低減技術の導入により、さらに15%程度の改善が可能であると考えられ、外航帆走商船、天然ガス改質舶用セラミックエンジン、燃料電池推進船等といった技術の開発研究も既に着手されている。

一方、外航船舶で輸送される貨物総量は、世界の経済成長とともに全体としては着実に増加していくことが予想される。その結果として、前述したようなさまざまな技術を個々の船舶に導入したとしても、これによる輸送エネルギー効率の改善効果は外航船舶全体としての貨物総量の伸びに相殺されてしまい、本調査において第二評価基準として掲げた温室効果ガスの排出総量の6%削減を達成することは極めて困難であると考えられた。

これを解決するための一層の削減には、減速航行といったような大胆な手を打つ必要がある。しかしながら、こういった方策を実施に移すためにはこれを受認する社会的なコンセンサスの形成が不可欠である。また、他の輸送機関を含めた環境税の導入等、減速航行に対してインセンティブを付与する実効性のある制度の整備が必要である。

このように、外航船舶の運航に伴う温室効果ガスの排出総量を削減する事には極めて大きな困難が伴うが、まず1]既存の削減技術の導入や輸送エネルギー効率の悪い老齢船の代替等、すぐにでも実行に移すことができる対策について、IMOにおける国際的な枠組みの制定に向けて早急に取り組むとともに、2]将来のさらなる削減に必要な先進的な技術開発を促進するために、環境税等を財源とした研究開発プロジェクトへの支援やクリーン開発メカニズム(CDM)の制度化によるインセンティブの付与等、必要な環境整備に取り組む一方、3]モーダルシフトによる輸送機関全体での排出総量削減を図るために、グリーン調達税制や環境会計の導入等により、荷主側がモーダルシフトを進めやすいような環境条件を整備する必要があるものと考えられた。

 

 

 

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