・着火は噴霧の根元、ノズル近傍。噴霧の進行方向に火炎発達。副室上部に未利用空気
・先に主室に流出した燃料に着火。その際、燃焼ガスが副室に逆流し、主室の燃焼が一時停滞
・その後、副室の燃料が主室に噴出、燃焼する。輝炎は早く消滅する
○ 遮熱エンジン相当
・着火遅れ:0.4ms
・着火は噴霧の根元、ノズル近傍。着火時の燃料噴霧の到達は副室中ほど。約20数mm。火炎は噴霧の発達にともなって噴霧先端に向かって進行。
・着火直後の副室内の燃焼は高温容器での燃焼と酷似しているが、ノズル近傍周辺にも火炎存在。圧縮行程中の空気流入により燃料が分散されたため。
・副室上部に未利用空気が存在。
・主室に噴出した火炎は主室で再燃焼。その際、主室の燃焼ガスが副室に逆流し、主室の燃焼が一時停滞。
・副室の燃焼ガスが再び噴出するが、噴出したガスは燃焼室外周に到達し、火炎は燃焼室全体に広がる。
・燃焼後期では、火炎は燃焼室外周から中心に向う流れが形成。シリンダに到達した噴流がシリンダ壁で反射したため
・輝炎は長期間観察され、実機における熱発生率における燃焼後期の緩慢な燃焼を説明している。
以上のように、廃食用油を燃料とした遮熱エンジンの燃焼は、短い着火遅れと長い燃焼期間が特徴であり、これは軽油を燃料とした一般的な遮熱エンジンの燃焼特性とほぼ同様となっている。
(2) 設計要素の影響
a. 連絡口面積比の影響
単噴口ノズルにおいて、連絡口面積比を0.9%にした場合の燃焼経過を図5・21に示す。この場合では、主室の燃焼が一時停滞する時期までは、連絡口面積比が1.5%の場合とほぼ同様の燃焼経過を示している。しかし、燃焼の中、後期では副室から主室へ燃焼ガスが流速の大きい噴流として明確に観察され、輝炎の消滅も連絡口面積比が1.5%の場合に比べて早くなっている。したがって、単気筒エンジンにおいて、噴射ノズルφ0.55×1、連絡口面積比が0.9%の場合に図示熱効率が向上したのは、連絡口面積比を小さくすることによって、副室から主室への噴流が主室での燃焼を活発にしたためである。
一方、多噴口の場合では連絡口面積比による燃焼の差異は明瞭ではなく、連絡口面積比が1.5%の場合においても副室からの火炎は噴流として明らかに噴出しており、輝炎の消滅も速い。多噴口ノズルにおける燃焼経過を図5・22〜図5・25に示す。