はじめに
本報告書は、競艇公益資金による日本財団の助成事業として平成10年度から平成12年度までの3ヶ年計画で実施された「舶用機器の設計・技術情報の交換の高度化に関する開発研究(造舶Web)」の成果をとりまとめたものであります。
世界的に厳しい国際競争の続く造船・舶用工業市場において、我が国の造船及び造船関連企業は、コスト競争力の向上を図るべく、これまで社内業務を中心に効率化を推進しているところであります。更に競争力を高めるためには、企業内の情報システムの高度化を促進するとともに、造船関係事業者間における各種情報を効率良く交換することが重要であります。
造船関係事業者間における情報交換には、設計や資材発注等に係る舶用機器及びその関連部品(これらの多くは受注生産であり、かつ搭載される船舶毎に仕様も異なります。)等の仕様、設計データ、機器類の図面等の各種情報があります。これら多岐にわたる各種情報を電子データとして、効率良く活用することが各企業のコスト競争力を高め、国際市場において生き残る方策であることから、造船関係事業者間の効率的な情報交換システムの構築が望まれています。
このため、国内の舶用機器メーカが取り扱っている約200品目のうち、平成10年度5品目、平成11年度25品目、平成12年度20品目の合計50品目(派生品目追加により実質66品目)について、情報交換に必要な設計・技術情報交換の情報表現形式の標準化を行いました。これら標準化された品目については順次、造舶間において実証実験を通して実際の業務環境での情報表現形式とシステムの有効性を検証いたしました。
その成果がシステムのバージョンアップに反映され、本開発研究の最終年度にあたります本年度に、実用化に即したシステムとして完成いたしました。これを受けて、本システムを運用して行くための会社が設立され、平成13年4月からは、実業務の中で本格的に稼働することが可能となりました。これはまた、この種の事業の成果としては多大な成果であり大変喜ばしいことであります。
今や社会インフラストラクチャーになったインターネットを利用する本システムを有効利用いただき、国内外におけるコスト競争力のさらなる向上に寄与することができれば幸いです。
本事業は、運営委員会(小山委員長(東京大学名誉教授)推進部会(田渕部会長、新家部会長代理)、企画WG(重松リーダ、伊東サブリーダ)の各委員会等委員のご熱心なご審議・ご検討によるほか、国土交通省をはじめとする関係者のご協力により完遂したものであり、これらの方々に対し心から感謝の意を表する次第であります。
平成13年3月
財団法人シップ・アンド・オーシャン財団
理事長 今義男