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安全委員会は、本事件の状況から見て、全船橋当直航海士、更に、連邦、あるいは州公認の水先人を含む、全ての船舶運航に関係する者に、この種の訓練を実施する必要性があると確信する。安全委員会は、コースト・ガードが国際海事機関に対し、訓練及び資格証明並びに当直の基準(STCW)の改正を強力に求めるように提案してきた。それが、この勧告書の意図と合致するからである。46CFR10の改訂は、STCWの改正が保留されたことで先延ばしになってきている。そして、STCWが改正されれぱ、46CFR10と同一なものとなるし、それに対し、合衆国は署名するであろう。STCWの改正会議は、差し当たり1995年5月に開かれる予定となっている。それであるから、安全勧告書M-91-6は、“公開--満足できる活動、”の等級で残ることになり、本件の調査の結果として、同勧告書は生きているのである。

極く最近に発生した二つの事件に対する、船長/水先人の連絡の失敗を含む、BRMを念頭に置いた安全委員会の調査については、この章のあとの部分で検討する。(注37)

注36 海難事件報告書--ギリシャ国籍油送船ワールド・プロディギー乗揚事件。1989年7月23日ロード・アイランド州海岸沖合で発生。(NTSB/MAR-91/01)

注37 海難事件報告書--ギリシャ国籍油送船シノーサ、合衆国曳き船シャンディN押され船衝突事件。1990年7月28日

テキサス州ガルベストン湾レッド・フイッシュ島付近で発生。(NTSB/MAR-91/03);パナマ国籍旅客船バーミューダ・スター乗揚事件。1990年7月10日マサチューセッツ州バッザード湾で発生。(NTSB事件抄報DCA90MM043.1993年2月12日採択)

 

1990年7月28日14時40分ごろ、長さ601フィートのギリシャ籍油送船シノーサが、テキサス州ガルベストン湾ヒューストン・シップ運河のレッド・フイッシュ島近くで、合衆国籍曳き船シャンディNに押されていた三倉のタンク船に衝突した。入航中のシャンディNは、丁度、長さ820フィートのリベリア籍油送船ヘレスポント・フエイスに追い越され、かつ、出航中のシノーサと行き会い中であった。そして、その最中に衝突したのである。負傷者はなかったが両船と積荷の損害は、178万4105ドルに達したと推定された。コースト・ガードは、汚濁油の除去に210万ドルを要したと推定した。安全委員会は、次のように結論した:

…考えられるシノーサとシャンディN被引き船の衝突の原因は、シノーサの水先人が過大な速力で航行していたこととシノーサ、シャンディ両船の各水先人が追い越しと行き合いの各航法に対する措置の失敗による…

安全委員会は、シノーサとヘレスポント・フエイス双方の水先人と航海当直者が3隻が著しく接近して通過するのを避ける適切な航法をとらなかったこと、シノーサの船長と水先人が、船長/水先人間の適切な討議をしなかったことに原因があると断定した。

 

 

 

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