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これは、入航した際の航路をほぼ反対方向になぞるもので、水深の大きな水域を航行するものであった。水先人は、以前から喫水が28フィートを超える船舶ではヴィンヤード海峡を出るためにブラウンズ・レッジ礁の北側を通る航路を使ってきたと証言した。NOAA版海図13218号では水先人が考えていた航路中に記載されている最小水深は、49フィートである。そこで、もし、水先人が考えていた航路(カッティハンク島の南方2海里)を通ったとしたら、本件乗揚は、多分、避けられたであろう。しかし、QE2の船長が、水先人の考えた航路に懸念を示したので、水先人は、船長の考えに従って針路を変えたところ、その直後に乗り揚げたのである。水先人は、海図に記載されている水深39フィートに気付いていたけれども、船長が推測した2フィートの船体沈下を加えても、水先人、船長の両人は、その地点を通過することに何の間題もないと思っていたと、後に、証言している。しかしながら、安全委員会は、もし、水先人か船長かが(21時54分の船位測定後の)新しい針路が水深39フィート地点に近いことに、特別、かつ、十分な事前の注意を得ていれば、本船のナビゲーターが海図に引いた進路線と水先人が計画した進路線のいずれもが水深39フィート水域を避けているところから見て、水先人、船長ともこの水域を避けようとしたであろうと確信している。

水先人が船長の懸念を考えて変針を行ったとき、新しい進路が障害地帯を替わっているかどうか良く調べていなかった。安全委員会は、船長の要請に応じて変針する前に、ソー・アンド・ピッグス礁を避けるために、新進路を確実に安全なものとしておくべきであったと確信している。そうすれば、当然、水深39フィート水域も避けられたのである。安全委員会は、ブラウンズ・レッジ礁の南方を通過するための変針を行う前に、もし、QE2の船長と水先人とが、新進路線の通過水域について討議していたら、水深39フィート域に接近することに十分注意したであろうし、その結果、多分、この浅瀬は避けたであろうと結論している。

もし、ヴィンヤード海峡出航の全航路が、船長/水先人の相談で決めたのであれば、ナビゲーターが考えた水深の大きな南方航路か、カッティハンク島の2海里南方を通過することになる水先人が考えた航路のどちらかが、選択されたであろう。どちらの航路も水深39フィート水域を完全に避けているのである。そして、この乗揚事件は発生しなかったであろう。水先人の意見か、船長の意見か、どちらかを選ぶことができたのであり、両者の発航前の相談で得られた結論に従えば、よい結果となったであろう。どちらの航路も、この水深39フィート水域を横切って、本船を海図にない岩石地帯に進入させることはなかったであろう。

ヴィンヤード海峡を出航する際の速力として、船長が25ノットを選択したのは、本船ナビゲーターが計算した値を基にして、次の日の朝、ニュー・ヨークに到着する予定表に合わすために必要な速力であると考えたからである。

 

 

 

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