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本船は、英国商船法及び連邦王国運輸局が要求する国家規格、1960年海上における人命と安全のための国際条約(SOLAS'60)そして1966年国際満載喫水線条約に適合している。1987年の主要修正の完了に伴って、本船は、SOLAS'74及び1973年の船舶からの油濁汚染防止国際条約に適合し、また、1978年議定書で修正された内容にも対応している。これに加えて合衆国コースト・ガードは、合衆国各港から同国人を旅客として乗船させて出航する外国籍船に対して行う、確認検査執行権に従うことに同意する文書を本船に与えている。

QE2は、旅客1,900人、乗組員1,015人計2,915人分の居住施設を備え、船体は、上下14段の甲板があり、そのうちの10段は旅客用のものである。操舵室をもつ操船用船橋は、船体最上段の信号甲板の前方端にある。本件発生時には、旋回圏、船体停止までの時間、同停止までの距離を示す図表、数値を記した操縦性能表示板が操舵室に置かれていた。この表示板には、船体沈下特性を示す情報については記されていなかった。(水力学的要因及び船体沈下減少については、本報告書中の実船試験及び研究の項で説明する。)中央操船指令所は、操舵室の前部に位置し、その指令台には、船体と機関の状態を示す様々な計器、警報機、それと速力、針路を調整する機器と共に他の装置が並んでいた。

操舵室内の航海用機器は、二基のレーダー、速度計、電気航海計器(全地球船位測定機構(GPS)、人工衛星通信受信機、オメガそしてロランCを含む。)、コンパス(ジャイロ及び磁気)と操舵機である。音響測深儀の一台が、操舵室に設置され、事件発生時には作動不能の状態であった。操舵室内部の操船指令台と操舵スタンドの直ぐ後方に海図台があって、二等抗海士が測定船位の記入に使っていた。海図室は、操舵室の後方に位置し、海図収納箱があった。海図収納箱の上方に、測深々度を記録する作動可能な二基の音響測深儀があった。海図室内には、ジャイロコンパス修正装置、針路記録機(コース・レコーダー)とナビゲーターが使う海図、書誌を含むその他の装置が置かれていた。QE2の海図箱には、殆ど全世界の海域、港湾を網羅する約1,500枚の海図が揃っていた。その多くは、英国版であり、海洋・気象庁の発行する合衆国海図も少なからず含まれていた。

各々が直流10,000ボルト、1,050万ワットの出力を持つ、九基のディーゼル駆動の発電機があり、その電力で、それぞれがプロペラ軸を動かす二基の電気モーターを駆動している。本船では、それぞれのプロペラ軸に可変ピッチ式プロペラが装備されている。九基の発電機のうち、四基を駆動させれば推進力のために必要な電力を含む、船内の全電力を供給することが可能である。電気駆動モーターは、最大航海速力32ノット、巡航速力28.5ノットを出すことが可能である。

QE2の主機関その他の機関装置は、船内の最下段甲板あるいは内底板と称されるタンク頂板に装備されている。

 

 

 

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