結論の要約
1992年8月7日英連邦王国籍旅客船:国営郵便輸送船クィーン・エリザベス二世号は、マサチューセッツ州ヴィンヤード海峡を外海に向け航行中、カッティハンク島の南方約2海里半の地点において乗り揚げた。本件では、死傷等の事態は発生していないが、物的損害は重大であった。仮修理、本修理に費やした金額は、おおよそ1,320万ドルである。その上、同年10月2日に再就航するまでの営業損失の総計は、5,000万ドルに達したと推定されている。
運輸省国家運輸安全委員会は、クィーン・エリザベス二世号乗揚の推定可能な原因として水先人、船長そして当直航海士達がヴィンヤード海峡通航の航海計画について討議し、その結論の確認を怠った上、計画にない進路を採用することとしたのちの状況の変化に対する注意を怠ったことにあると結論するものである。本件発生の原因に、クィーン・エリザベス二世号の船体沈下に及ぼす速力と水深との関連についての必要な情報を欠いていたことがあげられる。当運輸安全委員会は、本報告書により討議の内容は下記のとおりであったと発表する:
・船長、水先人、船橋当直者間に、速力、進路を考慮した、航海計画の内容についての相互理解が妥当であったか
・船橋内の資料管理の妥当であったか
・速力増加に伴う、船底下余裕水深の減少に関してのQE2の船長、水先人が利用可能となる情報提供が妥当であったか
・海洋・気象局発行海図に示された測量結果の通報が妥当であったか
・本件に関わった乗組員への薬物、飲酒検査の検査員に対する、コースト・ガードの指示内容が妥当であったか
・船外退出時における身体障害者の避難誘導手段が妥当であったか
本調査の一結論として、当運輸安全委員会は、アメリカ合衆国コースト・ガード、運輸省、海洋・気象局、キューナード海運株式会社、合衆国水先人協会に提示する勧告書を作成した。