「当該者がその行為を意図的に行ったか?」の質問に対する答えがイエスの場合、その行為は意図した行為となる。意図した行為は計画通りにいく行為であるが、行為が不適切であり、これらは計画段階でのエラーとなる。
2) エラーの分類又はルール違反
第二のサブステップは意図性についての確定に向けて、失敗を最もよく説明するエラーの分類又はルール違反を検出することである。エラー/ルール違反となりうるもののカテゴリーとしては次の4種類がある。:すなわち、スリップslip、ラプスlapse、ミステークmistake及びルール違反violationである。スリップslipとは失敗が注意に関わる場合の意図しない行為である。これは実行段階でのエラーである。ラプスlapseとは失敗が記憶に関わる場合の意図しない行為であり、これは実行段階でのエラーである。
ミステークmistakeは意図した行為であるが、ルール又は計画に反する行為について慎重な意思決定がないことである。これは計画段階でのエラーである。
ルール違反violationはルール又計画に反する行為について故意の意思決定がなされた計画段階での失敗である。恒常的なルール違反は、設計又は定めた作業慣行が不完全なことが多く、作業手順を定期的に修正したり、あるいは厳密に守らないことから毎日発生している。これに対し、例外的ルール違反exceptional violationは、職務遂行に当たり安全規則を故意に無視するような作業慣行についての一回性の違反であるという傾向にある。この場合でも、悪意ある行為への関与ではなく、ただ職務遂行の一環である。
ステップ5-隠れた要因の特定
ステップ4及び5が意味するそれぞれの作業の指し示すものは、調査官が事件のエラー/ルール違反とこれに至った所為との関係を明らかにしようとするとき何が実際に起きたかという点からみると多少乱暴な感じがするかもしれない。簡単にいうと、行動とは意思決定と行為又は活動で構成される。ステップ3では、行為又は意思決定(すなわち、不安全行為又は不安全意思決定)を特定した。ステップ4では、行為又は意思決定について誤っているものを明らかにした。ステップ5では、個人又はグループの行為又は意思決定の背後にある隠れた原因を明らかにすることに焦点をあてる。この場合、所与の失敗モード(従って、エラー/ルール違反及び不安全行為)の出現をしやすくする要因が作業システムの何処にあるかを確定することが重要である。これらの要因は隠れた要因と呼ぶ。ステップ1及び2のSHEL及びReason体系を用いて収集、系統化した作業システム資料を検討することによって発見できる。