5. 韓国舶用機器企業との競争・協調を軸にした今後の日本舶用機器企業のあり方
最後に、将来にわたる韓国企業との競争・協調のあるべき姿を検討することにする。
日本の舶用機器企業の将来事業環境に関して、次のような変化が予想される。
1] 韓国造船業の伸張により、日本国内建造量は、頭打ち傾向が続く可能性が高い。
2] 韓国の舶用工業競争力は、現段階では、日本と比較すると全般的に劣っているものの、実力は着実に上昇しており、今後とも韓国国内造船市場の拡大を背景に、力を付けてくると考えられる。
3] 韓国を始めとした海外市場では、日欧企業間の競争も激しい。昨今の円高ユーロ安は日本企業にとっては競争上、不利に作用している。
4] 長期的には中国の台頭も予想される。
これらの外部環境変化は、いずれの要因とも日本の舶用企業にとってマイナスの影響を与えるものとなっている。即ち、
1] 国内新造船市場の伸び悩みは、国内舶用機器市場の拡大が限定的であることを示している。従って、成長機会を求めるためには海外市場に目を向けなければならない。
2] しかしながら、海外市場では、価格競争力、技術を中心とした製品競争力ともに、韓国企業、欧州企業の競争力上昇が目立っており、日本企業の相対的な競争地位は、低下しかねない状況にある。
このような中、日本の舶用工業企業としては、
1] あらためて、コスト削減を行い、対韓国企業、対欧州企業で相対的に低下した価格競争力の回復に努める。
2] 価格競争を回避し他社の追随を許さない事業展開を実現するために、保有技術力等を軸にした事業の差別化の徹底に努める。
といった点が、今後の基本的な戦略方向となると言える。
日本舶用企業の今後のあり方については、当該事業の競争力水準によって、差異が生じよう。特に、世界の2大造船国であり2大舶用製品市場である日韓両国間での競争と協調という視点から、両国の競争力格差に着目すると、以下のようにまとめることができる。
【日本の競争力が韓国の競争力を上回っている舶用機器製品】
中型エンジン、ポンプ、電気機器、プロペラ、航海計器、無線通信、等
注:製品名は順不同である。
これらの製品は、現時点では日本の競争力が韓国を上回っている。しかしながら、前述のように今後、事業環境に厳しさが増すことが予想され、今後とも日本企業の優位性が維持できる保証はない。現在、日本企業が競争優位にあっても、決して予断を許さない。従って、日本企業は次のような対策を積極的に検討することで、競争優位の維持を図っていくことが不可欠である。