【弱み】
1) MAN B&Wのライセンス生産にとどまっており、独自モデルを有していない。
そのために、
・ライセンサーの戦略に制約される。(例:機種が古く大きいため、特定の船のエンジンルームには搭載しにくい。)
・収益源の部品ビジネスをカバーできない。
・開発能力がないため、トラブル対応が弱い。
・MAN B&Wを選好しない船主には、対応できない。
2) 生産規模が小さく、量産効果を発揮できない。(但し、現代重工業は公称能力ベースで見ると、量産効果が発揮できる基準である年産500台まで生産能力を拡大している。)
このように補機に関しては、韓国の競争力は強いとは言えず、韓国国内市場でも輸入品が一定シェアを維持する状況が当分続くと見られる。また、船主の意向、製品価格のいずれで見ても、韓国製補機が日本に輸入される事態は今後とも想定しにくい。
3. その他の舶用機器
(1) ポンプ
ポンプのうち、カーゴオイルポンプは、高い技術力を背景に日本製品が韓国市場においても強い市場地位を占めている。他方、機関室に設置するポンプは、徐々に韓国メーカーが力を付けている。ここでは、後者について記載することにする。
韓国のポンプ(機関室に設置するポンプを言う。以下同様。)市場は、従来より輸入品(日本製品が多い)のシェアが高かったものの、近年では韓国国内唯一のメーカーである新新ポンプの市場地位が上昇している。同社は元来、陸用機器メーカーであるが、舶用分野に参入し、現在では韓国市場の2割を占めるようになっている。当初は中堅造船所向けが多かったが、近年では、現代重工業を中心に大手造船所との活発な取引をおこなっている。同社の価格は、輸入製品に比べ安価であったため、現在では、プライスリーダーとしての存在となっており、輸入品の価格もそれに合わせて引き下げられている。新新ポンプの従業員数は、約150名、生産能力は8,000〜10,000台/年となっている。
韓国大手造船所(調達担当)インタビュー結果によると、日本製、韓国製、欧州製ポンプの評価は、表のとおりにまとめられる。インタビュー結果でも、韓国製ポンプは、技術的には日本製に比べ遜色はないとしている。韓国の大手造船所のうち日本製ポンプを多く使用する企業は、日本製を選択する理由として、調達先を替えることによる設計変更を指摘しているが、それでも価格差が10%以上あれば、設計変更してでも韓国製品に移行するメリットがより大きいとしている。