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I. 韓国経済の現状と今後の展望

 

1. 韓国のマクロ経済の推移と展望

(1) マクロ経済の推移

韓国経済は、第二次石油危機時の1980年のマイナス成長を唯一の例外とし、80年以降、年率5%以上の高い経済成長を達成してきた。特に、85年のプラザ合意後の円高局面では輸出急増により3年連続10%超の2桁成長を遂げている。その後、輸出の伸び悩み等により経済成長は鈍化したものの、内需拡大もあり、比較的安定した経済成長を遂げてきた。しかし、1997年末の通貨危機を契機に、1998年の経済成長率はマイナス5.8%に一気に落ち込んだ(通貨危機の原因と韓国政府の対応については後述)。

韓国経済が苦境に陥った原因は、国内と海外の2つの要因に分けることができる。

国内要因としては、供給過剰問題が指摘される。歴史的に、韓国の大部分の財閥が収益性よりも規模を優先し、投資の原資を他人資本に依存しつつ事業多角化や事業規模拡大に走った。その結果、多くの産業で供給過剰問題が顕在化した。韓国のみならずアジア地域全般として供給力拡大速度が市場拡大速度を上回っていたため、韓国企業が供給過剰を輸出拡大で補うことにも限界が見えてきた。このような中で、97年上半期以降、韓宝グループを始めとした財閥の倒産が相次いだ。97年の1年間で上位30財閥のうち、8財閥で経営が破綻した。このような財閥の破綻は金融機関に多額の不良債権を発生させ、金融機関の業績悪化、信用縮小を招いた。また、経営が破綻していない財閥でも全般に、株主資本比率、資本/負債比率は良好な水準とは言えず、安全性の面で多くの課題を残している。

他方、海外要因としては、97年7月にタイで発生した通貨の大幅下落が、韓国の金融機関の経営悪化を背景に韓国へ飛び火した。その結果、韓国からの資本逃避が相次ぎ、1ドル800ウォン台で推移していた為替が急落し、一時的に2000ウォン程度にまで下落した。韓国の外貨準備高も急減し、97年末にはデフォルト(債務不履行)の危機に陥った。韓国は97年末にIMFに支援要請し、韓国経済はIMFの管理体制に入った。

その後、韓国経済は当初の予想をはるかに越える回復を見せ、1999年の経済成長率は10.7%、2000年第1四半期〜第3四半期は10.4%と、通貨危機に見まわれたアジア諸国の中では最も早い回復を見せた。

なお、1人当たりGDP(米ドル表示)は、為替水準が通貨危機以前の水準に回復していないため、1万ドル水準回復にはなお、時間がかかると見られている。

 

 

 

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