第I編 情報技術を活用した舶用機器のアフターサービスの充実に関する調査研究
1 調査の目的
舶用機器メーカは、船舶運航の支援として、20〜30年間という非常に長期間に亘る修理・部品補給・緊急対応等のアフターサービスの実施を通じ、船舶の安全運航と海洋環境保全に貢献する重要な責務を担っている。
一方、船舶管理における世界の動向は、ISMコード(国際安全管理コード)の導入等に見られるように、陸上・船上の組織における業務・責任・権限の明確化、種々の業務・作業手順のマニユアル化、さらにはSMS(Safety Management System)の構築等、まさに船舶管理業務の変革に迫られており、舶用工業界としての貢献も強く求められるようになってきた。
このような状況において、日本舶用工業会では平成11年度から3ヶ年計画で「情報技術を活用した舶用機器のアフターサービスの充実に関する調査研究」の取組みを開始した。これは最新の情報通信技術(IT)を活用して、舶用機器のアフターサービスの質的向上と迅速性の飛躍的改革を図り、船舶運航支援の近代化を推進することを通じて、我が国舶用工業の国際舶用機器市場における優位性を確立することを目的とするものである。
平成11年度においては、船社・船舶管理会社と舶用機器メーカ間の情報交換・情報連携を強化することが有効との認識に立って、船社・舶用機器メーカ間の情報交換の現状評価およびあるべき姿に関してアンケート・ヒアリング調査を行い、双方の意識の間にある大きなギャップの存在を明らかにするとともに、その解消のための方策として、高度情報化アフターサービスの体系化を試みている。
平成12年度の本調査研究事業においては、11年度に引き続き高度情報化アフターサービス体系の再検証を経て、さらなる具体的な検討として高度情報化アフターサービスの概念設計/ビジネスモデルの策定を行うものとする。ビジネスモデルは、情報技術を活用した舶用機器のアフターサービス強化への取組みにおいて、船社・船舶管理会社および舶用機器メーカに対して、共通の目標と、また目標に向かうことへのインセンティブを与えることを目的としている。
また、船社・船舶管理会社と舶用機器メーカの間にはこれまで情報交換についての共通土壌が無かったことを考慮すると、上記の机上の作業のみでは検討が不十分との認識に基づき、概念設計/ビジネスモデルの一部検証を目的とした高度情報化アフターサービス実験を併せて実施するものである。