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3.6.2 曲線部における展張実験

実際の船舶のハンドレールの船尾コーナー部にオイルカーテンを取り付け、展張作業を行うことで、概観上の違和感の有無、展張における船上での作業性、曲線部における膜材展張の問題点の抽出、展張後の膜材の状態を検討する。このため、神戸商船大学実習船深江丸(総トン数449トン、全長49.95m、垂線間長45m、型幅10m、喫水3.2m)の左舷の船尾コーナー部を用いて実験を行う。

実験装置は上記の実験と同じであるが、全長は3.6m(アウターカバー2基分の長さ)とした。また、コーナー部に関しては、コーナー部専用のアウターカバーは用いずインナーカバーのみとした。こうした理由は、コーナー部における膜材の収納状態が外部より観察できるためである。同じ理由から、インナーカバーにはハーフパイプを用いない仕様とした。オイルカーテンを取り付けた情況を写真5と写真6に示す。

実験は1名の作業員により2基のアウターカバーを開放した後、投下用重錘を投下することでインナーカバーを開放し、膜材を海中へ展張することとする。

 

(展張における船上での作業性)

展張時の情況を写真7から写真9に示す。展作張業そのものはスムーズにこなわれた。これは、本実験が船尾甲板部で行われたため、広いスペースがあり目立った障害物もなかったため作業が行いやすかったためであると考えられる。

 

(曲線部における膜材展張の問題点の抽出)

インナーカバーの開袋後、膜材がアウターカバーのコーナー部の端部に乗ってしまい、落下しなかった。すなわち、図5のA部にコーナー部で振り分けられた膜材が乗りかかってしまい、膜材の自由落下を妨げた。今後、アウターカバーの構造はA部のような膜材の落下を妨げる部分を削除すべきで為ると考えられる。

膜材は作業員が手作業で投下したが、写真8に示すようにコーナー部上端のインナーカバーが上方にまくれており、膜材自身にもしわが固まっている。緩やかな曲線部では問題になることはないと考えられるが、船首先端の鋭角部や船尾のコーナー部などのように取り付け部のカーブが鋭角的な箇所に関しては直線部と同様の収納方法ではオイルカーテンの設置方向に対する引張り力と圧縮力が加わるため膜材が落下し難くなると共に、膜材にしわが固まるので、これらの部位に設置するオイルカーテンには直線部とは異なる収納方法を用いる必要があると考えられる。

 

3.6.3 膜材の接続部に関する実験

実際のオイルカーテンは、1枚の膜材で船体の全周を覆うことは不可能なことから、いくつかのユニットに分轄されることとなる。その時、ユニットとユニット間には膜材の継ぎ目ができることとなり、ここから滞留している油を逃がしてしまうことが懸念される。そこで、継ぎ目部に対する基礎的な実験として、継ぎ目部を構成する隣り合う膜材の表面と裏面にマジックテープを取り付け、展張された膜材が自然に接続されることを目的としたオイルカーテンの要素模型を制作し、室内の空気中においてこの確認実験を行った。

 

 

 

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