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当社ソフトシール弁と比較して、弁本体の面間の小さい新型弁を設計製作したが、これはメタルシール用の弁で、シールとしては最初から単一金属から削り出したシール(ソリッドシール)の開発を目標に研究を行ってきた。

しかし上記目的の項でも述べた如く先行メーカと衝突を避けられる限られた形状のソリッドシールでは、種々補助及び支援部品を付加したシール機構でも、常温と低温(-196℃)の環境において目標とするシール性能の獲得が困難な状態がつづいていた。

そこで視点を変えて、配管用市販されているシールで弾力性及び柔軟性に優れたシールの特殊成形品(Uタイトシール)の追加採用を行って、シール性能試験を実施したところソリッドシールに比べて安定性に富んだシール性能が得られた。従って、本研究の対象をソリッドシールにおいていたが、実用化に最も近いシールとしてUタイトシールの採用を決めた。

 

Uタイトシール機構を図1に示す;

Uタイトシールは、スプリング、内被及び外被の3層からなる円管をOリング状に成形したシールである。3層の金属は夫々異なり弾力性、柔軟性及びシール面圧を確保する構造を持っている。

弁体は低膨張材料鋳物で製作してシール面をCrメッキにて仕上げている。

この組合せにより常温と低温の環境において高いシール性を発揮するものである。即ち、従来のステンレス鋳鋼(SCS)で製作した弁体よりも高い面圧が低膨材料弁体のもつ低い線膨張係数(以後α値と省略)から得られる。

 

ソリッドシール機構はUタイトシールとの比較用として設計したものを図2に示す。これは、FEM解析等によりその実用化への調査を行うものである。

 

3.2 低膨張材料の鋳造技術の調査

当社のソフトシール弁の鋳造品製作メーカーである大同特殊鋼(株)殿の協力を得て、低膨張材料の鋳造技術について調査を行い、実際にシール機構の重要部品である弁体鋳造の実施を行った。

従来、小物部品の低膨張材料(インバー鋼)鋳物は精密鋳造で、真空溶解、真空鋳造法を採用しており問題無く製作されている。しかし、低膨張材料による大型砂型鋳物の実績が殆どないため鋼種選定に関して種々検討を行った。

1) 低膨張材料のインバー材鋳物のガス固溶限界(図3に示す)がステンレス鋳鋼に対して非常に狭い範囲にあり、ガスブロー欠陥が発生しやすいため鋳造出来ない可能性があった。

2) 線膨張係数目標達成のための調査において、インバー鋼、スーパーインバー鋼、ステンレスインバー鋼が検討された。これらの中でスーパーインバー及びステンレスインバーがより小さいαを有することが文献から解った。

 

 

 

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