2] 406MHzビーコン端末装置
COSPAS-SARSATシステムにおけるビーコン端末装置は図3.4.2-1のシステム概要に示す通り、EPIRB(海事救難用)、ELT(航空救難用)及びPLB(個人の救難用)の3種類に分類される。
表3.4.2-1に各端末装置の比較、相違点を示す。
(2) 衛星イパーブ及び小型船舶用衛星イパーブの現状と問題点
1] 衛星イパーブと小型船舶用衛星イパーブの相違について
衛星イパーブは、GMDSSにおける衛星非常用位置指示無線標識としてSOLAS条約で決められた船舶への装備を義務付けた設備で、COSPAS-SARSATの性能基準に加え、IMOの「406MHzで運用する浮揚式衛星非常用位置指示無線標識の性能基準」[最新の改訂版は、決議 A.810(19)]の一般要件と、追加要件を適用したものである。
我が国では、船舶救命設備規則で浮揚型(自動離脱装置付)と非浮揚型が規定されているが、ほとんどの船舶には浮揚型(自動離脱装置付)が装備されている。
一方、小型船舶用衛星イパーブは我が国が独自に導入した設備で、平成5年5月の「小型船舶安全規則」の全面見直し、改正時に「小型船舶安全規則」が適用される小型船舶に対して装備を要求された設備である。
設備の性能基準は、一般船舶用衛星イパーブの性能基準に対して、小型船舶の実体に合わせて幾つかの項目を緩和されている。
2] 小型船舶用衛星イパーブの現状と問題点について
小型船舶用衛星イパーブの設備は、装備の対象となる小型船舶以外に、対象外の小型漁船、レジャー船への搭載・普及を図るため、表3.4.2-2に示す通り衛星イパーブに比べ一部の性能基準を緩和し低価格化を図ることとした。しかし、現在小型船舶用衛星イパーブとして型式承認を取得し、販売されている設備は1機種しかない。また、船舶への装備の実体は、装備が対象となる小型船舶以外には殆ど普及していない。これには、次のような問題があると考えられる。
ア 対象となった船舶の絶対隻数が少なく、また、装備する場合は、一般船舶用衛星イパーブ(自動離脱機能は無い)でも可とされたため、需要増加への期待が乏しく開発メーカーが殆どなかった。
イ 基本設計は一般船舶用衛星イパーブと同じであるので、小型船舶に装備するために適した小型化に至っていない。
ウ 小型船舶用衛星イパーブは、一般船舶用衛星イパーブの性能基準の一部を緩和された効果で販売価格は、一般船舶用衛星イパーブの1/2以下(約4割)との調査結果がある。しかし、ユーザの意識との開きが大きい。
エ 出荷検定時での周波数安定度の測定がIEC基準より厳しい測定法となっており、発振器に汎用品が利用出来ず特注品を用いるため、機器コストに影響している。