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はじめに

わが国の自然の多くは、過去の人間との関わりの中で、その多様な気候風土と独特の農業的土地利用によって、多様かつ複雑な生物相をはぐくんできた。でも、ため池、水路、水田などからなる伝統的な稲作水系は、水生半翅類、水生甲虫類、トンボ類など多種多様な水生昆虫類の温床であった。

しかし、現在ではこうした稲作水系はコンクリート護岸や圃場基盤整備、あるいは生活排水や農薬などによる水質の汚濁・汚染などで絶滅に瀕する生物も多い。また、中山間地域では、手間のかかる谷津田や棚田自体が放棄されている。そのため、かつての稲作水系に豊富にみられた水生昆虫の中にも、タガメやゲンゴロウ、ハッチョウトンボなどのように、全国的に急激に減少してしまったものもいる。

本研究では、今後の水生昆虫のためのビオトープづくりの基礎データを集積することを目的として、中山間地域の放棄水田に浅い池の実験区を造成し、水生昆虫の種数や個体数などの推移について調査を行った。

2001年3月

(社)大阪自然環境保全協会

担当理事 木下睦夫

 

 

 

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