【事例報告】
市街地に残った里山的緑地での市民による都市林の創造
紫金山みどりの会:高畠耕一郎(大阪府 吹田市)
【発表概要】
大阪府吹田市の紫金山公園は、周囲が宅地開発された市街地の中にあって、みどり豊かな里山的緑地が残されている。また、国の史跡や重要文化財(吉志部神社)もある。
このような遺跡を含む自然環境を、多様な生き物がすむことができる都市の中の自然林として創造し、維持するために市民ボランティア参加で行っている。
【報告】
(1) 吹田市は急速に都市化が進んだ市
1] 1960年 千里ニュータウンの建設開始
2] 1970年 日本万国博覧会の開催
3] 水田、田畑、竹林は激減(1910年頃90%以上→1990年5.6%)
(2) 紫金山(公園)の概況〜古い歴史と開発による急激な変化〜
1] 吉志部一族(製陶工人)が居住、瓦等を制作していた遺跡・神社等が存続している。
2] 千里丘陵の南端にあり、近隣の人々が薪炭等の光熱材の採集地としていたが、電気・ガスが普及し、採集地としての里山の役目は終わった。
3] 名神高速道路の建設が行われ、紫金山公園・釈迦ヶ池を貫通する。(1964年)
4] 紫金山周辺地区(11.4ha)も含めて総合公園として公園整備に入る。(1989年)
5] 都市計画道路2線(豊中岸部線・千里丘豊津線)が計画され、一部完成。(1999年)
(3) 行政の取組と市民活動
1] 市が紫金山公園の整備を計画。釈迦ヶ池・周辺地区を含めて11.4haの土地の買い取りを発表。(1989年)
2] 水道橋、噴水などの大型施設建設が目白押しの公園計画に「吹田自然観察会」が自然環境の維持と生態系の保存についての要望書を提出(1990年、1994年、1996年)し、市との話し合いで、計画見直しが検討される。
3] 都市林創造への出発になる要望書への回答が市から提示される(1997年)
4] 市は開発型の公園整備を中止し、自然環境保全に配慮した整備計画に切り替えるため、(社)大阪自然環境保全協会に自然環境調査、保全計画を依頼。(1997年)
5] 紫金山公園の生態系を守り、復元するプロジェクトを(社)大阪自然環境保全協会に委託。市民ボランティアによる紫金山里山再生事業がはじまる。(1998年)
(4) 紫金山にとっての貴重種保護とその復元作業の目標
1] 紫金山公園の生物多様性の保全と環境林・都市林としての生態系の維持、形成に留意しつつ、紫金山の名にふさわしい植生景観にする。
2] 亜高木・低木層に繁茂し、林床を暗く覆うアラカシ、クロバイ、ヒサカキなどの常緑樹を伐採し、コバノミツバツツジを主体とするツツジ類を保全する。ただし、公園としての景観機能を損なわないように、ブロック毎に10〜20%程度の常緑樹も保全する。
3] アベマキ、コナラなどの落葉広葉樹による高林を目標とし、枝打ちなどで林内光量を増加させる手法とする。また、アカマツは枯死したものや生育不良のものを伐採除去する。
4] この事業は、市民参加で行う。