自然環境の価値を理解した人間性豊かな人々が増えれば、里山はますます育まれ、守られることになり、このような人々の増加は結果的に政治に反映され、行政的にも里山が守られることになります。それは里山のみにとどまらず、国土全体の環境保全にも波及してゆきます。もちろん、市民による里山管理のみで、全ての里山にまで手入れが行き届くわけではありません。しかし市民による里山への関わりが大きな波を起こし、結果的により全体的な目標までをも実現させることになるのです。
わが国において、市民による自然復元のネットワーキングが形成され、着実な活動成果をみせるには、市民自身のやる気はもちろん、行政や企業が環境問題、都市問題、教育問題、医療問題、老人問題などとも連動させて、複眼的思考のもとにこれをバックアップできるかどうかにかかっています。
里山での活動によって市民や老人達の健康が増進すれば、行政の医療負担が軽減することになり、また、市民の自然や環境に対する認識が深まれば、ライフスタイルの見直しによりゴミ総量が減少して、行政の処理負担は大幅に軽減することになります。さらに、里山での自然活動の中から生まれてくる連帯心や、創造性のある個性ゆたかな人格形成によって、地球環境危機や老齢化社会に対応できる人づくりにもつながります。「いじめ」「非行」などの教育問題はもちろんのこと、大人社会における社会病理的問題も、相当に解消するものと考えられます。